スクラロースとは — プロテインで最も使われる人工甘味料の特性・安全性・代替
スクラロースは砂糖の約600倍の甘味を持つ人工甘味料で、摂取した大部分は未変化のまま体外に排出される。JECFA・EFSAはADIを体重1kgあたり15mgに設定し、IARCの発がん性評価対象になったことはない。プロテインでの使用実態・加熱安定性・代替甘味料を整理する。
スクラロース(sucralose)は、ショ糖(砂糖)分子が持つ3つの水酸基(ヒドロキシ基)を塩素原子に置換して作られる人工甘味料で、甘味度は砂糖の約600倍とされる。摂取したスクラロースの大部分は消化管でほとんど吸収されず、未変化のまま体外に排出される。JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)とEFSA(欧州食品安全機関)は、いずれも1日摂取許容量(ADI)を体重1kgあたり15mgに設定している。
スクラロースとは何か — 化学名・甘味度・代謝経路
スクラロースは、ショ糖(砂糖)の分子が持つ3つの水酸基を塩素原子に置換した構造を持つ合成甘味料である。甘味度は砂糖の約600倍とされ、プロテインをはじめとする加工食品で広く使用されている。塩素原子への置換によって消化酵素で分解されにくい構造になっており、この特徴が体内での挙動を大きく左右する。
経口摂取したスクラロースは、消化管でほとんど吸収されず、大部分がそのまま体外へ排出される。Roberts et al.(2000, Food and Chemical Toxicology)が健常男性8名を対象に1mg/kg体重を単回経口投与した試験では、投与後5日間で投与量の78.3%が糞便中に、14.5%が尿中に排泄され(総回収率92.8%)、その大半は未変化体のスクラロースだった。投与量の1.5〜5.1%(平均2.6%)はグルクロン酸抱合を受けた代謝物として尿中に検出されたが、体内で代謝される割合はごくわずかである。血漿中濃度のピーク(Tmax)は投与から約2時間後、有効半減期は13時間と報告されている。
体内でほとんど代謝されないため、エネルギー源として利用される量は無視できるほど少なく、食品表示上はカロリーゼロの甘味料として扱われる。この代謝の仕方は、消化管で分解されフェニルアラニンなどのアミノ酸に変換されるアスパルテームとは対照的だ。両者の違いは次のセクションで扱う安全性評価とも密接に関わる。
スクラロースの安全性はどう評価されているか — JECFA・EFSAの評価経緯とアスパルテームとの混同
スクラロースのADIは、JECFAが1991年の評価でラットを用いた2年間試験のNOEL(無毒性量)1,500mg/kg体重/日に安全係数100を適用し、体重1kgあたり15mgに設定した。EFSA(Castle et al., 2026, EFSA Journal)は2026年2月に公表した再評価でこのADIを変更する必要はないと結論している。日本でも1999年に薬事・食品衛生審議会が同水準のADIを設定し、添加物として指定した。
スクラロースは、IARC(国際がん研究機関)による発がん性評価の対象になったことがなく、Group分類そのものが存在しない。2023年7月にIARCがGroup 2B(ヒトに対して発がん性がある可能性がある区分)に分類したのはアスパルテームであり(IARC Monographs Volume 134)、スクラロースではない。同時期にJECFAはアスパルテームのADI 40mg/kg体重/日についても変更不要と結論しており、「IARCが警鐘を鳴らし、JECFAは据え置いた」という構図自体は事実だが、対象はアスパルテームであってスクラロースではない点に注意が必要だ。
両者は化学構造も体内での挙動も異なる。アスパルテームは消化管で分解されフェニルアラニン・アスパラギン酸・メタノールとして吸収されるのに対し、スクラロースは前述の通り大部分が未変化のまま排出される。この違いを踏まえずに「スクラロースにも発がん性の懸念がある」と紹介する記事も見られるが、評価対象を取り違えた説明であり、現時点でスクラロースについて公的機関が示している評価は、JECFA・EFSA・厚生労働省がいずれもADI 15mg/kgを据え置いているという点に尽きる。
プロテインにスクラロースはどれだけ含まれているか
国内で流通するプロテインパウダー(WPC・WPI・WPHなど)の甘味料表示を74製品分集計したところ、35製品(約47%)がスクラロースを使用していた(2026年7月時点の調査)。人工甘味料の中では最も採用例が多く、アセスルファムKやネオテームと併用される製品も少なくない。ただしフレーバーによって甘味料構成が異なる製品が多く、同一ブランドでもプレーン・ナチュラル表記の製品ではスクラロースを使用していない場合がある。
以下は、スクラロースを使用している代表的な製品例である(ブランド名のアルファベット順)。
| ブランド・製品 | 甘味料構成 | 備考 |
|---|---|---|
| DNS ホエイプロテインSP | スクラロース(単独使用) | フレーバーにより異なる場合がある |
| DNS プロテインホエイ100 | アセスルファムK・スクラロース・ネオテーム | 人工甘味料3種を併用 |
| GOLD STANDARD 100% Whey | スクラロース・アセスルファムK・ステビア | フレーバーにより構成が異なる |
| GronG ホエイプロテイン100 スタンダード | スクラロース(フレーバー品) | ナチュラル版はスクラロース不使用 |
| Myprotein Impact Whey Protein | スクラロース・アセスルファムK | 一部フレーバーで構成が異なる |
| SAVAS カゼイン&ホエイ MPC100 ココア味 | アスパルテーム・スクラロース・アセスルファムK | 人工甘味料3種を併用 |
各製品のスクラロース含有量(mg/食)を公開しているメーカーは少なく、製品ごとの正確なADI充足率を算出することは難しい。参考値として、厚生労働省の令和元年度調査(2020年報告)が生産量統計に基づいて行った摂取量推計では、体重58.6kg換算でスクラロースの推定摂取量はADIの約0.3%だったと報告されている。この数値は国内で流通する全食品からの推計であり、プロテイン単体を対象にした値ではない点に留意する必要がある。
スクラロースの加熱安定性は問題ないか
de Oliveira et al.(2015, Scientific Reports)の熱分析によれば、スクラロースは約125℃(正確にはTonset 124.5℃)から熱分解が始まり、塩素化フラン誘導体・塩素化テトラヒドロピラン・多塩素化芳香族炭化水素(PCAH)などの塩素化合物を生成することが確認されている。同研究では、沸騰水と同程度の98℃の条件でも塩素化合物が生成する可能性が示唆された。常温の水や冷たい牛乳に溶かして飲む場合はこの温度域に達しない。ただし熱湯やホットミルクで溶かす場合は98℃に近い条件になりうる。
一方、プロテインパンケーキやプロテインバーのように焼く調理を行う場合は話が別だ。生地の内部温度が100℃を超えることは通常ないが、表面部分は125℃前後に達することがある。EFSAは2026年の再評価で、菓子パン類(fine bakery wares)へのスクラロースの用途拡大について、高温・長時間の加熱条件下で塩素が他の分子へ移行する不確実性を理由に承認を見送った。ただしこの留保は業務用の高温・長時間加熱を前提としたものであり、家庭での短時間の加熱調理にそのまま当てはまるかどうかは明らかになっていない。
スクラロースを避けたい場合の代替甘味料はどれか
スクラロースを避けたい場合、天然由来のステビア(200〜450倍)や羅漢果(モグロシドV、250〜425倍)、あるいは人工甘味料の中でもアセスルファムK(約200倍)やアスパルテーム(180〜200倍)への切り替えが選択肢になる。ただし甘味度・ADI・体内での挙動は甘味料ごとに大きく異なり、「天然だから安全」「人工だから危険」という単純な区分は成り立たない。以下に主要5種の甘味料を、甘味度が高い順に整理する。
本記事の収載基準は「国内プロテインで採用例が多い代表的な甘味料5種(人工甘味料3種・天然甘味料2種)」とする。
各甘味料のADI・IARC分類は規制機関(JECFA・EFSA)の公表値を確認済み、使用頻度は本サイトが集計した国内74製品の甘味料表示データに基づく(2026年7月18日時点)。基準の適合は人工甘味料・天然甘味料を問わず同じ厳格さで確認する。
| 甘味料 | 甘味度(砂糖比) | ADI(mg/kg体重/日) | IARC分類 | 体内代謝経路 | 加熱安定性 | プロテインでの使用頻度 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| スクラロース | 約600倍 | 15(JECFA・EFSA) | 評価対象になっていない | 糞便78.3%・尿14.5%が未変化中心で排泄(Roberts et al., 2000) | 約125℃から分解開始(de Oliveira et al., 2015) | 国内74製品中35件(約47%)で使用 |
| ステビア(ステビオール配糖体) | 200〜450倍 | 4(ステビオール等量) | 評価対象になっていない | 腸内細菌で加水分解後、尿中排泄 | 比較的安定(高温調理でも風味劣化少) | 羅漢果より採用ブランド数が多い(ULTORA・uFit等) |
| 羅漢果(モグロシドV) | 250〜425倍 | 未設定(GRAS認定) | 評価対象になっていない | 加水分解後、腸内細菌で代謝(詳細未解明) | 比較的安定とされるが公表データは限定的 | 少数(BAZOOKA WPH・WPC等) |
| アスパルテーム | 180〜200倍 | 40(JECFA・EFSA) | Group 2B(2023年) | 消化管で分解されアミノ酸・メタノール等に | 熱に弱く高温調理・保存で甘味が減退 | 一部製品でスクラロース等と併用(例: SAVAS) |
| アセスルファムK | 約200倍 | 15(JECFA・EFSA) | 評価対象になっていない | ほぼ未変化のまま尿中排泄 | 比較的安定(200℃程度まで) | スクラロースとの併用例が多い |
※甘味度は各甘味料の上限値で比較し降順に整理した(スクラロースは単一値のため約600倍を採用)。ADIはJECFA・EFSAの現行値、羅漢果は未設定。使用頻度は本サイト調査(2026年7月時点、product_specsデータベース集計)に基づく。
甘味度で比較すると、スクラロースが砂糖の約600倍で最も高く、次いでステビア(200〜450倍)・羅漢果(250〜425倍)がその7割前後、アスパルテームとアセスルファムKは180〜200倍前後にとどまる。一方でADIを見ると、天然甘味料であるステビアの方が人工甘味料のスクラロース・アセスルファムKより低い値(4mg/kg)に設定されており、甘味度の高さとADIの水準は必ずしも一致しない。
人工甘味料を避けてプロテインを選ぶ場合、羅漢果を使用した製品としてはBAZOOKA WPH、BAZOOKA WPC(プレーン。チョコレート・ストロベリーはステビアに変更)がある。ステビアを使用した製品ではALPRONナチュラル、uFit、ULTORAなどが挙げられる。甘味料そのものを避けたい場合は、GronGナチュラルライン、nichie無添加ラインなど無甘味料の製品も選択肢になる(アルファベット順)。いずれも天然甘味料への切り替えであり、風味や後味の好みで選ぶのが現実的な判断基準になる。
よくある質問
プロテイン1食分のスクラロースは問題ないか
プロテイン製品に含まれるスクラロースの正確な含有量を公開しているメーカーは少なく、1食あたりのADI充足率を個別に算出することは難しい。参考値として、食品安全委員会が2020年の推計で示した「体重58.6kg換算でADIの約0.3%」という数値は全食品からの推計であり、プロテイン単体の値ではない。この推計は全人口の平均値であり、プロテイン・低カロリー飲料などスクラロース含有製品を日常的に複数併用する場合は個人差が大きい。メーカーが個別の含有量を公表していない以上、断定はできないが、他の加工食品からの摂取量も合わせた総量で評価するのが望ましい。
スクラロースは加熱しても大丈夫か(プロテインパンケーキ等)
水や牛乳に溶かして飲む通常の摂取方法では、スクラロースの分解が始まるとされる約125℃(de Oliveira et al., 2015)に達することはなく、加熱分解を心配する必要はない。プロテインパンケーキやプロテインバーのように焼く調理を行う場合、生地表面が125℃前後に達することがあり、塩素化合物が生成する理論上の可能性は否定できない。ただしEFSAの2026年再評価が問題視したのは業務用の高温・長時間加熱であり、家庭での短時間調理にどこまで当てはまるかは明らかになっていない。
アセスルファムKとの違いは何か
スクラロースの甘味度は砂糖の約600倍、アセスルファムKは約200倍で、甘さの強さには差があるが、ADIはともに体重1kgあたり15mgに設定されている点が共通する。プロテイン製品では単独よりも両者を少量ずつ組み合わせて甘味の質を調整する場合が多い。体内動態では、スクラロースが大部分そのまま糞便中に排泄されるのに対し、アセスルファムKはほぼ未変化のまま尿中に排泄される点が異なる。
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参考文献
- Roberts A, Renwick AG, Sims J, Snodin DJ. (2000). Sucralose metabolism and pharmacokinetics in man. Food and Chemical Toxicology, 38(Suppl 2), S31-41. DOI: 10.1016/s0278-6915(00)00026-0
- de Oliveira DN, de Menezes M, Catharino RR. (2015). Thermal degradation of sucralose: a combination of analytical methods to determine stability and chlorinated byproducts. Scientific Reports, 5, 9598. DOI: 10.1038/srep09598
- EFSA CEP Panel (Castle L, Andreassen M, Aquilina G, et al.). (2026). Re-evaluation of sucralose (E 955) as a food additive and evaluation of a new application on extension of use of sucralose (E 955) in fine bakery wares. EFSA Journal, 24(2), e9854.(DOIはCrossRefでの照合ができなかったため省略。詳細はEFSA公式サイト参照)