プロテインの素材にこだわるなら何を基準に選ぶか — グラスフェッド・天然甘味料・原材料数の3軸評価

グラスフェッド乳原料・天然甘味料・原材料数の3軸でプロテインを評価する方法を整理する。Benbrook 2018の脂肪酸組成データ・EFSAによる甘味料のADI・NOVA分類の観点から国内主要プロテイン9製品を原材料数昇順で比較する。

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プロテインの素材にこだわるなら、グラスフェッド乳原料・天然甘味料・原材料数の3軸で評価するのが実用的だ。本記事はこの3軸(原料の透明性に関わる観点)に絞って整理する。コスパやタンパク質含有率を重視する選び方についてはプロテインを科学的に選ぶ基準とはを参照されたい。国内主要9製品を比較すると、原材料数は1成分(乳清たんぱくのみ)から21成分まで幅があり、グラスフェッドと天然甘味料を両立する製品は価格帯¥5,000〜16,000/kgに集中する。Benbrook et al.(2018, Food Science & Nutrition)の全米1,163サンプル調査では、グラスフェッドミルクは通常ミルクと比較してオメガ3脂肪酸が乳の段階で約147%多く、ω6/ω3比は0.95対5.77と大きく異なる(ただしホエイプロテイン製品は脱脂工程を経るため、最終製品への反映度は製法に依存する)。

なぜ「素材へのこだわり」が選択基準になるのか

Monteiro et al.(2019, Public Health Nutrition)が提示したNOVA分類では、スポーツプロテインサプリは乳清プロテイン単離物・人工甘味料・乳化剤等を含むことからGroup 4(超加工食品)に典型的に分類される。Forsyth et al.(2023, British Journal of Nutrition)がオーストラリアのアスリート・運動者140名を対象に行った横断調査では、回答者がスポーツフードの代替として挙げた日常食品の54%がNOVA分類でUPFに該当し、回答者の51%がUPFに対して健康上の懸念を示した。ただし本調査はオーストラリア限定・n=140の小規模調査であり、日本の一般消費者に直接適用できるものではない。

海外では「clean label protein(クリーンラベルプロテイン)」という概念が広まりつつある。これは成分表示がシンプルで、人工添加物が少なく、原料の由来が明確なプロテインを指す非公式な呼称だ。日本では法的な定義はなく、各メーカーが独自の基準で訴求している。

プロテイン選びにおいてNOVA分類や成分の透明性が注目される背景には、日常的に摂取するものだからこそ原材料の質を気にする消費者が増えていることがある。栄養価(タンパク質量・価格)のみでなく、何が入っているかという観点が選択基準に加わっている。

グラスフェッド乳原料は普通のホエイと何が違うのか

Benbrook et al.(2018, Food Science & Nutrition)が全米1,163サンプル(2014-2016年)を分析した大規模観察研究によれば、グラスフェッドミルクのオメガ3脂肪酸含量は通常ミルク比で+147%、CLA(共役リノール酸)は+125%多く、ω6/ω3比はグラスフェッド0.95対通常ミルク5.77だった。ほぼ100%牧草ベースの飼育条件が脂肪酸プロファイルを顕著に変化させることを実証している。

ただし、これは乳全体の脂肪酸組成の話であり、ホエイプロテイン製品に加工された後の脂肪酸含量については別途考慮が必要だ。ホエイプロテイン(特にWPC)は脱脂工程を経るが、一部の不飽和脂肪酸は製品中に残存する。Alothman M et al.が引用するBenbrook et al.(2018)によれば、グラスフェッド由来乳ではCLA・α-リノレン酸が有意に高く、TMR(総混合飼料)飼育では飽和脂肪酸(C12:0〜C16:0)が多いという傾向は製法前の原料段階での差異として確認されている(Alothman M et al., 2019, Foods, DOI:10.3390/foods8080350)。

グラスフェッド乳原料の表記には、証明の水準によって差がある。NZではMPI(ニュージーランド一次産業省)のGrass-Fed Administrative Standardが飼料90%牧草・年間340日8時間以上の放牧・rBST(成長ホルモン)禁止を基準として定めており、この基準に基づく証明書の有無が「グラスフェッド表記のみ」と「認証書あり」の区別になる。比較製品を選ぶ際はどの基準に基づいているかを確認することが重要だ。

天然甘味料と人工甘味料でプロテインの品質は変わるのか

EFSA ANS パネルは2010年(EFSA Journal, 8(4):1537)にステビオール配糖体の安全性を評価し、ADIをステビオール等量4mg/kg体重/日に設定した(JECFAと同値)。遺伝毒性・発がん性・生殖毒性は認められず、体重70kgの場合のADI上限は280mg/日となり、プロテイン1食(30g)のステビア含有量はこの数%にとどまる。

羅漢果エキスについては、EFSAは2019年(Younes M et al., EFSA Journal, vol. 17, e05921, DOI:10.2903/j.efsa.2019.5921)に安全性評価を行い、急性毒性・遺伝毒性は低いと判断した。一方で、ラット90日高用量試験(3,752mg/kg/日)での精巣重量低下が未解決であり、慢性毒性試験データが不足しているとして「安全性結論不十分(insufficient)」と評価している。

この「安全性結論不十分」は危険性が確認されたという意味ではなく、長期安全性データが不足しているという評価だ。米国FDAはGRAS認定済み、日本・中国でも食品添加物として承認されているが、規制機関間で評価が分かれている状況にあり、「データ不足」と「安全性確認済み」は区別して理解する必要がある。

人工甘味料の代表格であるスクラロースは、FDA・EFSAともに承認済みで、ADIはスクラロースとして5mg/kg体重/日(EFSA)だ。アスパルテームは2023年にIARCが「発がん可能性がある(Group 2B)」に分類したが、JECFAとEFSAはADIの範囲内での使用を安全と評価している(2B分類はアロエベラ乾燥抽出物等と同レベルの分類)。いずれの甘味料も通常の使用量でのリスクは規制機関が評価しているが、健康上の優先事項や味の好みに応じて選択肢を整理するための情報として参照できる。

原材料数の少なさは品質の指標になるのか

NOVA分類の観点では、原材料数が少なく単一原料に近いプロテインほどGroup 4(超加工食品)から遠ざかる傾向がある(Monteiro CA et al., 2019, Public Health Nutrition, vol. 22, pp. 936–941, DOI:10.1017/S1368980018003762)。ただし、NOVA分類は食品の加工度を評価するための分類であり、健康への直接影響を断定するものではない。原材料数が少ない=品質が高いとは必ずしも言えないが、成分の透明性・添加物の少なさを重視する選択基準の一つにはなりうる。

原材料数が1成分のプロテイン(乳清たんぱくのみ)も国内で流通している(GronGナチュラル・LIMITESTプレーン・アルプロンNATURAL WPCプレーン等)。これらは甘味料もビタミン類も含まず、プロテイン原料のみで構成される。一方、原材料数が多い製品でも増加の主因は製品ごとに異なる。ザバス ホエイ100(15成分)はビタミン・ミネラル数種+人工甘味料2種を含む構成であり、BAZOOKA WPH(21成分)はビタミン13種+天然甘味料1種+乳化剤を含む構成だ。いずれもビタミン等の栄養強化成分が原材料数の相当部分を占めており、原材料数の多寡だけでなく「栄養強化目的の成分」と「甘味料・乳化剤等の加工目的成分」を区別して評価することが実用的だ。

「原材料数が多いから悪い」ではなく、何が追加されているかの内容で判断することが適切だ。ビタミン配合・フレーバー素材・機能性素材の追加は目的が明確であり、人工甘味料・着色料・保存料の多用とは区別して評価できる。

3軸で主要プロテインを評価するとどうなるか

国内主要9製品を3軸で並べると、原材料1成分の製品が3つ(GronGナチュラル・LIMITEST・アルプロンNATURAL WPC、いずれもNOVA Group 4から最も遠い構成(Monteiro CA et al., 2019, Public Health Nutrition))、天然甘味料を採用する製品が2つ(BAZOOKA WPC・WPH)、人工甘味料2種を使用する製品が2つ(DNS・ザバス)と分布する。グラスフェッド認証書ありかつ天然甘味料の組み合わせはBAZOOKA WPHのみで、価格帯は¥16,560/kg(単品600g換算)と最も高い。

以下の表は各製品のプレーン/ナチュラルフレーバーでの原材料数昇順に並べている。フレーバー付き製品では成分数が数倍異なる場合がある(GronGナチュラル1成分 → フレーバー付き16成分、BAZOOKA WPCプレーン6成分 → ストロベリー9成分)。beLEGEND WPC ナチュラルの「ブレンド」はグラスフェッドと穀物飼育乳原料のブレンド使用を指す(グラスフェッド比率の詳細は非公開)。Myproteinの定価は¥7,290/kgだが実売価格はセールにより30〜50%変動する。各製品のスペックは各メーカー公式サイトの情報に基づく(2026年4月時点)。

製品(代表フレーバー)グラスフェッド甘味料甘味料カテゴリ原材料数タンパク質/serving参考価格(/kg)
GronG ホエイ100 スタンダード ナチュラルなしなし不使用122.3g/29g¥4,980
LIMITEST WPC PURE プレーンなしなし不使用127.1g/35g¥4,580
アルプロン NATURAL WPC プレーンあり(表記)なし不使用122.5g/30g¥4,776
beLEGEND WPC ナチュラルブレンドスクラロース人工520.8g/28g¥3,867
BAZOOKA WPC プレーンなし(表記なし)羅漢果エキス天然622g/30g¥5,333
Myprotein Impact ナチュラルチョコなしスクラロース人工621g/25g¥7,290(定価)
DNS ホエイ100 プレミアムチョコなしスクラロース・アセスルファムK人工2種824.2g/35g¥5,523
ザバス ホエイ100 リッチショコラなしアスパルテーム・スクラロース人工2種1519.5g/28g¥7,588
BAZOOKA WPH サワーレモンあり(NZ・MPI証明書)羅漢果エキス末天然21(ビタミン13種含む)20.1g/30g¥16,560(単品600g換算)

アルプロンNATURAL WPCはグラスフェッド表記があるものの、NZ政府証明書等の認証水準の詳細は公式サイトからは確認できない段階にある(2026年4月時点)。グラスフェッドの証明水準を重視する場合は、メーカーへの問い合わせや証明書の確認が必要だ。

3軸の評価軸はそれぞれ独立している。「グラスフェッド認証あり」かつ「天然甘味料のみ」かつ「原材料数が最少水準」という三条件をすべて満たす製品は希少だが、どの軸を優先するかは個人の価値観と予算に依存する。原材料1成分を選ぶなら無味・無甘味料の製品が選択肢となり、グラスフェッドと天然甘味料を両立させるなら価格帯は上がる傾向がある。

よくある質問

Q. グラスフェッドプロテインは通常のプロテインより栄養価が高いのか

乳原料の段階ではオメガ3脂肪酸が+147%、CLAが+125%多い(Benbrook et al., 2018)。ただしホエイプロテイン製品は脱脂工程を経るため、脂肪酸の差が最終製品にどの程度残るかは製法・製品ごとに異なる。タンパク質含有量・アミノ酸スコアについてはグラスフェッド由来による有意差は確認されておらず、素材のトレーサビリティを重視する選択として位置づけられる。

Q. 天然甘味料のプロテインはなぜ価格が高い傾向があるのか

ステビア・羅漢果エキス等の天然甘味料はスクラロース・アセスルファムK等の人工甘味料と比べてコストが高い。加えて、天然甘味料は人工甘味料と比較して単位あたりの甘味が出にくい場合があり、使用量や製造工程の調整が必要となるケースがある。また、グラスフェッド乳原料との組み合わせでは原料コスト自体が上昇するため、価格差は原料・製造コストの反映として理解できる。

Q. 原材料がシンプルなプロテインは味が落ちるのか

乳清たんぱく1成分のみの製品(無味・無甘味料タイプ)は甘みや香りがなく、そのままでは飲みにくいと感じる人が多い。ただし料理・スムージー・牛乳割りなど使い方の自由度が高いというメリットもある。天然甘味料や少数のフレーバー素材を加えた製品では、人工甘味料を使用しないために甘味のバランスが異なる場合があり、好みは個人差が大きい。試飲・少量パッケージで確認してから本体を購入する方法が現実的だ。

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参考文献

  • Benbrook CM et al. Enhancing the fatty acid profile of milk through forage-based rations, with nutrition modeling of diet outcomes. Food Science & Nutrition, 2018; 6(3):681-700. DOI:10.1002/fsn3.610
  • Alothman M et al. The Grass-Fed Milk Story: Understanding the Impact of Pasture Feeding on the Composition and Quality of Bovine Milk. Foods, 2019; 8(8):350. DOI:10.3390/foods8080350
  • EFSA ANS Panel. Scientific Opinion on the safety of steviol glycosides for the proposed uses as a food additive. EFSA Journal, 2010; 8(4):1537.
  • Younes M et al. Safety of use of Monk fruit extract as a food additive in different food categories. EFSA Journal, 2019; 17(12):e05921. DOI:10.2903/j.efsa.2019.5921
  • Monteiro CA et al. Ultra-processed foods: what they are and how to identify them. Public Health Nutrition, 2019; 22(5):936-941. DOI:10.1017/S1368980018003762
  • Forsyth A et al. An online exploratory survey of Australian athletes’ and exercisers’ use of and attitudes towards ultra-processed sports foods. British Journal of Nutrition, 2023; 130(9):1625-1636. DOI:10.1017/S0007114523000648