微粒二酸化ケイ素とは — 固結防止剤としての役割と、各機関の安全性評価

微粒二酸化ケイ素(E551)はケイ素と酸素からなる無機化合物で、粉末の固結防止剤として使われる。EFSA・JECFA・厚生労働省・FDAが示した安全性評価の結論を、評価年と根拠となる一次資料つきで整理する。

微粒二酸化ケイ素(silicon dioxide、食品添加物としての表示名は「二酸化ケイ素」または「微粒二酸化ケイ素」)は、ケイ素と酸素からなる無機化合物である。食品添加物としては、粉末同士が水分でくっついて固まるのを防ぐ固結防止剤(アンチケーキング剤)として、プロテインパウダーやサプリメントの粉末に少量添加される。

日本では食品衛生法に基づく使用基準で、使用量の上限が食品の2.0%以下と定められ、母乳代替食品と離乳食への使用は認められていない。安全性については欧州食品安全機関(EFSA)が2018年と2024年の2回にわたって再評価しており、結論は段階的に更新されている。

微粒二酸化ケイ素とは何か

微粒二酸化ケイ素は化学式SiO2で表される無機化合物で、食品添加物として使用されるのは主に合成非晶質シリカ(synthetic amorphous silica、略称SAS)である。製法によってヒュームドシリカ(気相法)と含水シリカ(沈降法・シリカゲル等)に大別される。

食品表示上は「二酸化ケイ素」または「微粒二酸化ケイ素」という物質名で表記され、日本の食品衛生法上の指定添加物に分類される。EUではE551というEナンバーで管理されている。

天然に存在するケイ素化合物とは異なり、食品添加物用のSASは工業的に合成された微粒子で、多孔質な構造を持つ(Younes et al., 2018, EFSA Journal, 16(1), 5088)。この構造が固結防止剤としての機能を支えている。

なぜ粉末製品に入っているのか

粉末製品に微粒二酸化ケイ素が添加されるのは、粒子表面が周囲の水分を吸着し、粉末粒子同士が水分による架橋で固まる「固結(ケーキング)」を防ぐためだ。プロテインパウダーのように吸湿性のある粉末では、保管中の湿度変化でダマができやすく、固結防止剤なしでは流動性が損なわれる。

作用機序としては、微粒子が粉末粒子の表面に付着して粒子間の直接接触を妨げ、多孔質構造による水分吸着とあわせて固結を抑制するとされる(Younes et al., 2018, EFSA Journal)。ただし、この説明はEFSA文書内の一般的な物性記述に基づくもので、個別の物理化学試験データそのものではない。

粉末食品での固結防止という用途は、微粒二酸化ケイ素に限らない。ステアリン酸カルシウムや結晶セルロースも同様に流動性改善剤として使われるが、由来・化学的性質・食品表示上の名称が異なる。

成分分類主な役割食品表示上の名称
微粒二酸化ケイ素無機化合物(合成非晶質シリカ)固結防止・流動性改善二酸化ケイ素/微粒二酸化ケイ素
ステアリン酸カルシウム脂肪酸カルシウム塩固結防止・滑沢剤ステアリン酸カルシウム
結晶セルロース植物由来の多糖類誘導体固結防止・増粘・成形補助結晶セルロース

3成分はいずれも指定添加物として使用が認められているが、由来(無機か有機か)と食品表示上の名称が異なる。原材料表示では別々の名称で並ぶため、同じ役割を担う成分だと気づきにくい。

安全性はどう評価されているのか

微粒二酸化ケイ素の安全性は、EFSAが2018年と2024年の2回にわたって再評価している。2018年の評価では、入手可能なデータが不十分であるとして、一日摂取許容量(ADI)を新たに設定することも、既存の「not specified(特定しない)」という扱いを追認することもできないと結論づけられた(Younes et al., 2018, EFSA Journal, 16(1), 5088)。

ここで押さえておきたいのは、ADIが設定されなかった理由がデータの不足にある点だ。有害性が確認されたからADIを設けられなかったのではなく、評価に足るデータが揃わなかったために数値を出せなかった、という技術的な結論である。

2024年の再評価では評価の枠組みがADIから曝露マージン(margin of exposure、MOE)アプローチへ切り替わった。全人口グループでMOEが36以上であることが確認され、安全性の懸念はないと結論づけられている(Younes et al., 2024, EFSA Journal, 22(10), 8880)。2018年時点では評価が未整備だった生後16週未満の乳児向け食品についても、現行の摂取量水準では安全性の懸念を生じないとされた。遺伝毒性についても、2018年・2024年のいずれの評価でも懸念なしとされている。

機関評価年結論位置づけ
EFSA2018年データ不足によりADIの新規設定も既存の「not specified」扱いの追認もできず判断保留(未解決事項として2024年評価へ引き継がれた)
EFSA2024年全人口グループでMOE36以上、乳児(16週未満)含め安全性の懸念なしADIからMOEアプローチへ評価枠組みを変更した最新の結論
JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)1985年(第29回会合)以降グループADI「not specified」を維持EFSAとは異なる評価枠組みで、1985年から現在まで継続
日本(食品衛生法に基づく使用基準)食品の2.0%以下。母乳代替食品・離乳食への使用は認められていない使用量の上限を定める規制(安全性評価の結論ではなく使用基準)。出典は業界財団の編纂資料で、告示原文までは確認できていない
米国FDA21 CFR 172.480により食品添加物として認可。固結防止剤として使う場合は食品重量の2%を上限とする使用条件を定める個別規則(安全性評価の結論ではない)

JECFAは1985年の第29回会合でADI「not specified」を確立して以降、この位置づけを維持している。EFSAが2024年に採用したMOEアプローチとは評価の枠組み自体が異なるため、両者を単純に「厳しい・緩い」で比較するのは適切ではない。それぞれ独立した基準で運用されている評価体系だと理解しておく必要がある。

なお、EFSA 2024年評価が言及する「D50が2〜28nm」という粒子径の記述は、合成非晶質シリカを構成する一次粒子の特性評価であり、実際に食品として摂取される凝集体の粒子径を示したものではない。この限定を外して「ナノ物質だから危険」と一般化するのは、原文の記述を超えた読み方になる。

「危険」という情報をどう読めばよいか

「EFSAが二酸化ケイ素を再評価した」という事実は、「EFSAが危険と判定した」という意味ではない。2018年の評価はデータ不足によりADIを設定できなかったという技術的な結論であり、リスクが確認されたという結論ではなかった(Younes et al., 2018, EFSA Journal, 16(1), 5088)。

ADIの設定・非設定と、リスクが確認されたかどうかは別の論点である。データが不足していれば数値としてのADIは設定できないが、それは「危険性が確認された」ことと同義ではない。同時に、データ不足は「安全性が確認された」ことも意味しない。2018年時点でリスクは不明という位置づけだった。その後、EFSAは2024年に評価の枠組みをMOEに変えて再評価し、安全性の懸念はないという結論を出している。

原材料表示に「微粒二酸化ケイ素」とあるのを見て不安になる場合、確認すべきは①どの機関がいつ評価したか、②結論が何を意味しているか、の2点である。評価年と結論を切り離して要約された情報は、本来の趣旨とずれている可能性がある。

よくある質問

微粒二酸化ケイ素は体内に蓄積しますか

EFSAの評価文書では蓄積性に関する懸念は示されていない。JECFAは1973年の初回評価時点で、経口摂取されたシリカおよびケイ酸塩について「体内で毒性が蓄積した証拠はなく、尿中に排泄される」という趣旨の記述を残している。2018年・2024年のEFSA評価でも遺伝毒性の懸念はないとされている。

「ナノ粒子だから危険」という情報は正しいですか

EFSA 2024年評価が示した「D50が2〜28nm」という数値は、合成非晶質シリカを構成する一次粒子の特性評価であり、食品として摂取される凝集体そのものの粒子径ではない。この限定を外して食品添加物のシリカ製品全般をナノ物質として危険と一般化するのは、原文の記述を超えた解釈になる。

微粒二酸化ケイ素が入っていない製品を選んだほうがよいですか

日本の使用基準では使用量の上限が食品の2.0%以下と定められている。含有の有無は原材料表示で確認でき、含まない製品も市場に存在する。どちらを選ぶかは、規制機関の評価内容を踏まえたうえでの個人の判断になる。

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参考文献