マルトデキストリンとは — 難消化性デキストリンとの違いと、原材料表示での見分け方
マルトデキストリンはデンプンを酸または酵素で部分的に加水分解した多糖類で、分解の度合いを示すDE値が20程度を上限の目安とする。名前が似ていて消化性が正反対の難消化性デキストリンとの違いと、原材料表示での見分け方を整理する。
マルトデキストリンは、デンプンを酸または酵素で部分的に加水分解した多糖類である。分解の度合いを示すDE値(Dextrose Equivalent、デキストロース当量)が20程度を上限の目安とする範囲のものを指し、米国の連邦規則21 CFR 184.1444は「DE 20未満」、Hofman et al.(2016, Critical Reviews in Food Science and Nutrition)は「DE 3超20以下」と定義する。甘味はほとんどないが、消化・吸収はされる糖質である。
「デキストリン」という名前を共有しながら消化性が正反対の物質に、難消化性デキストリンがある。原材料表示ではどちらも似た文字列で並ぶため、表記だけでは見分けがつかない。
マルトデキストリンとは何か
マルトデキストリンは、トウモロコシ・じゃがいも・米などのデンプンを酸または酵素で部分的に加水分解して作られる多糖類である。分解の進み具合はDE値で表され、一次資料の範囲では20程度が上限の目安とされる。デンプンそのもの(DE0付近)よりは分解が進んでいるが、ブドウ糖(DE100)ほどは分解されていない中間的な物質だ。
DE値は「デンプンがどこまで細かく分解されたか」を示す製造上の指標であり、消化性マルトデキストリンの規制上の位置づけを整理したレビュー(Hofman et al., 2016)でもこの指標が分類の軸として使われている。数値が低いほど分子が大きく、高いほどブドウ糖に近い性質を持つ。デンプン、デキストリン、マルトデキストリン、グルコースシロップ、ブドウ糖はいずれも同じデンプンを出発点にしながら、加水分解の程度によって呼び名が変わる連続体だと考えると理解しやすい。
原料のデンプンは分子量が大きく水に溶けにくいが、部分的に加水分解することで溶解性が上がり、粉末として扱いやすくなる。この物性の変化こそが、加工食品でマルトデキストリンが広く使われる理由である。甘みがほとんどない点はブドウ糖と対照的で、これも加水分解の程度に由来する性質だ。
なぜプロテインに入っているのか
プロテイン製品にマルトデキストリンが配合される主な理由は、エネルギー密度の確保と粉末の溶解性向上にある。デンプンを部分的に加水分解したことで水への溶解性が上がる性質は、消化性マルトデキストリンの規制・栄養面を整理したレビュー(Hofman et al., 2016, Critical Reviews in Food Science and Nutrition)でも加工食品での利用が広がる要因として位置づけられている。同レビューは、甘味が低いまま炭水化物量を確保できる点を、飲料や粉末食品でマルトデキストリンが使われる理由として挙げている。体重増加を目的とするウエイトゲイナー系の製品は、少ない容量で多くのカロリーを確保する設計になっている。
タンパク質の同化を目的とした栄養戦略の一環として糖質を組み合わせる考え方自体は一般的だが、個々の食品がどのような効果をもたらすかは摂取量・タイミング・個人の代謝状態によって変わる。血糖値への影響やGI値の適用可否は、プロテインとGI値の関係で詳しく扱っている。
難消化性デキストリンと何が違うのか
難消化性デキストリンは、マルトデキストリンと同じくトウモロコシデンプンなどを原料とするが、加熱・酵素分解の過程で生じる未分解の画分を分画して製造される水溶性食物繊維である。消化酵素で分解されにくい構造を持ち、消化されるマルトデキストリンとは消化性の点で正反対の物質になる。腸内細菌学会の用語集によれば、特定保健用食品(トクホ)の関与成分として広く使われている。
両者の混同が起きやすいのは、名前の類似だけが理由ではない。英語表記にもゆれがあり、「resistant dextrin」と「resistant maltodextrin」がほぼ同じ物質を指して使われる場合がある。日本語の「難消化性デキストリン」は英語のmaltodextrinという単語と字面が近いため、消化される・されないの区別が言葉の上でも紛れやすい。消化性マルトデキストリンの分類を整理したレビュー(Hofman et al., 2016)でも、DE値による区分の対象はあくまで消化される画分であり、消化酵素抵抗性を持つ画分は別カテゴリとして扱われている。
難消化性デキストリンは消化酵素で分解されにくいため、摂取しても血糖応答への寄与が小さいと考えられている(腸内細菌学会 用語集)。効果の大きさは試験の条件によって幅があり、単一の数値に集約できる段階にはない。
マルトデキストリンの側も、高GI域の糖質として扱われることは多い。ただしGI値の国際標準表(Foster-Powell et al., 2002, The American Journal of Clinical Nutrition / Atkinson et al., 2008, Diabetes Care)には、マルトデキストリン単体の値として引用できる項目を確認できなかった。DE値が高いほど分解が進んでいる分だけ吸収も速くなるという関係は説明できるが、「GI値◯◯」という単一の数値を示せる段階にはない。血糖値との関係はプロテインとGI値の関係で扱っている。
原材料表示ではどう見分けるのか
マルトデキストリンは食品添加物ではなく、一般の食品原材料に分類される。「デンプンを加工した添加物」という印象を持たれがちだが、分類上は原材料表示の欄に記載される成分だ。
紛らわしいのは、食品表示で「デキストリン」とだけ記載され、それがマルトデキストリンかどうかを表記から判別できない場合がある点だ。日本生活協同組合連合会の解説(2017)は、デキストリンをデンプンの分解物であり食品添加物ではなく食品素材にあたると説明している。マルトデキストリンもデキストリンの一種にあたるため、原材料表示で両者が同じ「デキストリン」の語に収まることがある。表示のルールそのものを確認したい場合は、消費者庁の食品表示基準を直接あたるとよい。
難消化性デキストリンについては「難消化性デキストリン」「食物繊維(難消化性デキストリン)」のように、消化されにくい性質を含む名称で表示されることが多い。単に「デキストリン」とだけ書かれている場合は、消化されるマルトデキストリン由来の可能性が高いと考えられる。原材料表示欄の文言を照合する習慣が、両者を見分ける最も確実な方法になる。
マルトデキストリンと他の糖質はどう違うのか
消化性という一点に着目すると、4つの物質は2つのグループに分かれる。DE値20程度を上限とする分類(Hofman et al., 2016; 21 CFR 184.1444)に含まれるマルトデキストリンとブドウ糖・砂糖は消化・吸収される側、消化酵素で分解されにくい難消化性デキストリンはもう一方の側に位置づけられる。
| 項目 | マルトデキストリン | 難消化性デキストリン | 砂糖(ショ糖) | ブドウ糖(グルコース) |
|---|---|---|---|---|
| DE値 | DE 3超20以下(Hofman et al., 2016)/DE 20未満(21 CFR 184.1444) | DE値による分類の対象外(消化酵素抵抗性の画分) | DE値では表さない(二糖類) | DE 100(分解の基準値) |
| 原料と製法 | デンプンを酸/酵素で部分加水分解 | デンプンを加熱・酵素分解し未分解画分を分画 | サトウキビ・てんさい由来のショ糖 | デンプンの完全加水分解、または果実等由来 |
| 消化性 | 消化・吸収される | 消化酵素で分解されにくい | 消化・吸収される | そのまま吸収される |
| 甘味 | ほとんどない | ほとんどない | 甘味がある | 甘味がある |
| 食品表示上の分類 | 食品原材料(添加物ではない) | 食品原材料。トクホ・機能性表示食品の関与成分としての流通実績あり | 食品原材料 | 食品原材料 |
※データ取得時点: 2026年8月
この表からわかるのは、消化性という一点だけを見れば、マルトデキストリンはブドウ糖・砂糖と同じグループに、難消化性デキストリンはむしろ食物繊維に近いグループに分類されるということだ。名前の類似と性質の違いが逆方向に働いている点が、この2物質を区別する上での要点になる。
よくある質問
マルトデキストリンは食品添加物ですか
いいえ、食品添加物ではなく食品原材料に分類される。デンプンを加工して作られる点から添加物と誤解されやすいが、原材料表示の欄に記載される成分であり、添加物表示のルールは適用されない。
「デキストリン」とだけ書かれている場合、マルトデキストリンのことですか
その可能性はあるが、表記だけでは断定できない。食品表示基準上、デキストリンとマルトデキストリンのどちらも「デキストリン」という一括した表示が認められる場合があるためだ。消化されにくい性質を持つ難消化性デキストリンは「難消化性デキストリン」や「食物繊維」を含む名称で表示されることが多く、この違いが見分けの手がかりになる。
摂らないほうがよいのですか
摂取の要否は目的によって変わる。エネルギー密度を確保したい増量期には合理的な選択肢になり得る一方、血糖値への影響が気になる場合は摂取量やタイミングを検討する材料になる。血糖応答の詳細はプロテインとGI値の関係、ウエイトゲイナーとしての活用はウエイトゲイナーの選び方2026で扱っている。
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参考文献
- Hofman DL, van Buul VJ, Brouns FJPH. (2016). Nutrition, Health, and Regulatory Aspects of Digestible Maltodextrins. Critical Reviews in Food Science and Nutrition, 56(12), 2091-2100. (https://doi.org/10.1080/10408398.2014.940415)
- Foster-Powell K, Holt SHA, Brand-Miller JC. (2002). International table of glycemic index and glycemic load values: 2002. The American Journal of Clinical Nutrition, 76(1), 5-56. (https://doi.org/10.1093/ajcn/76.1.5)
- Atkinson FS, Foster-Powell K, Brand-Miller JC. (2008). International Tables of Glycemic Index and Glycemic Load Values: 2008. Diabetes Care, 31(12), 2281-2283. (https://doi.org/10.2337/dc08-1239)
- 21 CFR § 184.1444(米国連邦規則集)— Maltodextrin. (https://www.ecfr.gov/current/title-21/chapter-I/subchapter-B/part-184/subpart-B/section-184.1444)
- 日本生活協同組合連合会「デキストリンとは何ですか」(https://goods.jccu.coop/inquiry/faq/2017/11/post-300.html)
- 腸内細菌学会 用語集「難消化性デキストリン」(https://bifidus-fund.jp/keyword/kw041.shtml)