CFM製法とは — 商標としての位置づけとイオン交換法との違い
CFM(Cross Flow Microfiltration)はクロスフロー膜ろ過を指す技術名であると同時に、米国で登録された商標でもある。表示の有無だけで製法は判別できない。膜ろ過とイオン交換法の違いとあわせて整理する。
CFM(Cross Flow Microfiltration)はクロスフロー膜ろ過という分離技術を指す名称であり、同時に米国で登録された商標でもある。「CFM」という標章は1995年6月16日に出願され1997年7月8日に登録(登録番号2077943)、ステータスは「Registered And Renewed」で、指定商品はホエイタンパク質にあたる。技術の一般名として使われる語が、そのまま登録商標にもなっている。
この重なりがあるため、CFM表示の有無だけでは製法を判別できない。表示がない製品が膜ろ過を使っていないとは限らず、逆に表示があるからといって膜ろ過固有の効能が保証されるわけでもない。この点がこの用語を理解する上での出発点になる。
CFMとは何を指す名称なのか
CFM(Cross Flow Microfiltration)は、直訳すると「クロスフロー式マイクロフィルトレーション」であり、技術的にはろ過液を膜面に平行に流すことで目詰まりを抑えながら分離を行う膜ろ過方式を指す。この技術自体は乳業分野で広く使われる一般的な分離手法だが、CFMという名称は米国で登録された商標でもある。
米国商標データベース(USPTO記録)で確認できる「CFM」の登録内容は次のとおりである。シリアル番号74689319、登録番号2077943、出願日1995年6月16日、登録日1997年7月8日、ステータスは「Registered And Renewed」。指定商品は国際分類029で、栄養飲料・栄養飲料用の粉末ミックス・アイスクリーム・冷凍デザートに食品添加物として用いるホエイタンパク質にあたる。実際の商業使用の開始は1996年4月1日と記録されている。
関連する標章として「CFM NITRO」(登録番号3300130、2006年7月18日出願)がGlanbia Nutritionals Limited名義で登録・更新されている。同社の公式サイトは「Cross Flow Microfiltration (CFM)」「Provon CFM®」を®付きで表示している。ただし「CFM」単独の標章について、出願から現在までの権利者名の変遷までは公開情報から追いきれていない。
もう一点、確認の範囲についても断っておく。ここで確認したのは米国での登録状況であり、日本を含む他の法域での商標の状況は別に調べる必要がある。ある国で登録されている商標が、他の国でも同じ権利者に帰属しているとは限らない。
Smithers(2008)によるホエイ利用技術のレビュー(International Dairy Journal)では、限外ろ過(UF)・イオン交換(IE)・CFMが、20世紀後半に確立された分離技術として並列に紹介されている。ただしこれは学術文献での並列表記であり、CFMという略称が一般技術名として確立していたことまでを示すものではない。商標の登録が1995年出願であることを踏まえると、名称の由来と業界での定着の順序は本記事の調査では確定できない。
クロスフロー膜ろ過はどうタンパク質を分離するのか
クロスフロー膜ろ過は、原液を膜面に平行方向に流し続けながら圧力をかけ、膜の孔径よりも大きい粒子を膜面側に残し、小さい粒子だけを透過させる方式である。垂直に押し通すデッドエンドろ過と異なり連続運転がしやすく、膜面の目詰まりを抑えられる点が特徴である。
分離は孔径によるサイズの物理的な選別が原理であるため、原理上は加熱や化学薬剤を必須としない。膜ろ過は孔径によって呼び分けられ、比較的大きな孔径のものをマイクロフィルトレーション(MF)、より小さな孔径のものをウルトラフィルトレーション(UF)と呼ぶ。Ostertag & Hinrichs(2023, Foods)が用いたのは後者のクロスフロー限外ろ過である。
Ostertag & Hinrichs(2023)は、酸性ホエイに対してクロスフロー限外ろ過を行い、ラクトフェリンの回収率97%・免疫グロブリンG(IgG)の回収率83%を達成し、ラクトフェリン濃度を0.17g/Lから5.1g/L(約30倍)に濃縮したと報告している。
この数値には条件がついている。対象は酸性ホエイ、使用したのは限外ろ過膜、濃縮工程は8℃の低温で行われた(原乳段階では72℃・30秒のパスチャライゼーションを経ている)。**CFMが指すマイクロフィルトレーションではなく限外ろ過の結果である点も、そのまま外挿できない理由になる。**特定の条件下で膜ろ過が微量タンパク質を高い回収率で残しうることを示した査読データであって、膜ろ過を用いた製品一般の性能を示すものではない。同じ原理の膜ろ過であれば、CFM表示の有無にかかわらず同様の分離が起こりうる。
イオン交換法と何が違うのか
イオン交換法は、ホエイのpHを調整してタンパク質の電荷を変え、荷電したイオン交換樹脂に吸着させたうえで、pHを戻すことで脱着・回収する方式である。乳糖など吸着しない成分はホエイ液とともに先に流れ出る。分離を担うのが孔径ではなく電荷である点が、膜ろ過との根本的な違いになる。
Wang ZL et al.(2024, Journal of Dairy Science)のレビューは、β-ラクトグロブリンの分離手法として膜分離・イオン交換クロマトグラフィー・親和性クロマトグラフィー・沈殿法・二相水系分離法を並べ、イオン交換クロマトグラフィーとゲルクロマトグラフィーが広く用いられていると整理する。同レビューによれば、沈殿法は初期の粗精製に、HPLCや膜技術はさらなる精製に用いられる。手法ごとに得意な工程段階が異なるという整理であり、単一の手法が全工程で優位という記述にはなっていない。
「膜ろ過は変性が少なく、イオン交換法は変性しやすい」という単純な図式で語られることがあるが、これは査読データで一律に裏付けられた対比ではない。Nguyen DN et al.(2016, Journal of Dairy Science)は、加熱処理を経た標準的なWPCが低温処理のWPCと比べてラクトフェリンやTGF-β2の含有量が低いことを報告している。この結果は加熱の有無による差を示したものであり、膜ろ過とイオン交換法という製法そのものの比較ではない。
イオン交換法も低温で運用することは可能であり、変性の主因は製法の名称ではなく、工程内で加熱やpH調整をどの程度行うかにある。Wang ZL et al.(2024, Journal of Dairy Science)が引用するレビューの整理でも、膜分離・イオン交換クロマトグラフィー・親和性クロマトグラフィー・沈殿法など複数の分離手法が用途に応じて使い分けられているとされ、一方が常に他方より優れているという単純な序列は示されていない。
| 観点 | クロスフロー膜ろ過 | イオン交換法 |
|---|---|---|
| 分離の原理 | 膜の孔径による物理的なサイズ分離 | 樹脂への電荷による吸着と脱着 |
| 工程で使うもの | 膜と圧力(加熱・薬剤を必須としない) | pH調整のための酸・アルカリ |
| 残りやすい画分 | ラクトフェリン・免疫グロブリンなどの微量画分が残りやすい | 主要ホエイタンパク質を選択的に回収しやすい |
| 得意なこと | 画分組成を保ったまま濃縮する | タンパク質純度を高める |
本表は膜ろ過とイオン交換法という2つの分離原理の対比であり、特定ブランドの製品比較ではない。左列がCFMという名称が指す技術、右列が対比対象という並びになる。両者に一般的な優劣はなく、目的によって適した工程が変わる。
CFM表示からは何が読み取れるのか
CFM表示がある製品は、この商標を使用できる立場にある原料を用いていることを示す。ただしライセンスの方針や原料供給の関係までは公開情報から確認できておらず、表示から供給元を特定できるとまでは言えない。いずれにせよ、この名称自体が特定の効能を保証する表示ではない。
一方、CFM表示がない製品については、膜ろ過を使っていないと断定はできない。Glanbia Nutritionals以外のメーカーが同様のクロスフロー膜ろ過技術を独自の名称、あるいは無名称で用いている場合があり、逆にイオン交換法や通常のUF/MFのみを使っている場合もある。表示の有無だけでは製法を判別できない。
「CFM=高品質」という理解には根拠が薄い。Ostertag & Hinrichs(2023)は膜ろ過が特定の微量タンパク質画分を残しやすいことを査読データで示しているが、これは特定条件下での膜ろ過の結果であって、CFM表示のある製品だけに当てはまる効能ではない。技術の名称と、その技術が持つ物理的な特性は分けて理解する必要がある。
よくある質問
CFM表示がない製品は膜ろ過を使っていないのか。 そうとは限らない。CFMは登録商標であるため、同じクロスフロー膜ろ過技術を使っていても、別の名称や無名称で表示されることがある。表示の有無だけで製法の使用可否を判別することはできない。
CFM製法とWPIは同じものか。 異なる。WPIはタンパク質含有率による規格上の呼び方であり、CFMは分離工程の技術名称であると同時に米国で登録された商標でもある。WPIという規格の詳細はWPIとはで整理している。
膜ろ過とイオン交換法ではどちらが良いのか。 目的によって評価が分かれる。微量なタンパク質画分を組成ごと残すことと、タンパク質純度を高めることは別の目標であり、一方が常に優れているとは一般化できない。
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参考文献
- Smithers G.W. (2008). Whey and whey proteins—From “gutter-to-gold”. International Dairy Journal, 18(7), 695-704. (https://doi.org/10.1016/j.idairyj.2008.03.008)
- Ostertag F., Hinrichs J. (2023). Enrichment of Lactoferrin and Immunoglobulin G from Acid Whey by Cross-Flow Filtration. Foods, 12(11), 2163. (https://doi.org/10.3390/foods12112163)
- Nguyen D.N., Sangild P.T., Li Y., Bering S.B., Chatterton D.E.W. (2016). Processing of whey modulates proliferative and immune functions in intestinal epithelial cells. Journal of Dairy Science, 99(2), 959-969. (https://doi.org/10.3168/jds.2015-9965)
- Wang Z.L., Tang X., Wang M., She Y.X., Yang B.R., Sheng Q.H., Abd El-Aty A.M. (2024). β-Lactoglobulin separation from whey protein: A comprehensive review of isolation and purification techniques and future perspectives. Journal of Dairy Science, 107(12), 11785-11795. (https://doi.org/10.3168/jds.2024-25321)