高校生・部活アスリートのプロテイン入門 — 成長期の適正量・選び方・安全性
成長期の高校生に必要なタンパク質量を窒素バランス研究(Boisseau 2007: RDA=1.40g/kg/日)から解説し、部活種目別の推奨量・一般向けWPCとジュニア製品の比較・安全性の科学的根拠を整理する
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本記事は公開された学術論文および公的機関の情報に基づく事実の整理であり、特定の疾患の診断・治療・予防を目的としたものではない。個別の健康上の判断は医師・管理栄養士等の医療専門家に相談されたい。
Boisseau et al.(2002, European Journal of Applied Physiology)が平均約15歳の思春期男性(非活動群・サッカー選手群)を対象に行った窒素バランス研究では、正の窒素バランスが観察された平均タンパク質摂取量は1.57g/kg/日であった。運動の有無に関わらず同水準の摂取で正のバランスが得られており、成長そのものがタンパク質需要を高める独立した因子であることが示唆されている。一方、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の15〜17歳男性の推奨量は65g/日(体重基準では約1.0g/kg/日)であり、競技スポーツに取り組む高校生では食事だけでは目標量に届きにくい場合がある。
成長期の高校生にプロテインは必要か
競技スポーツを行う思春期のタンパク質推奨量(RDA)は1.40g/kg/日と報告されている(Boisseau et al., 2007, European Journal of Applied Physiology)。14歳男子サッカー選手11名の窒素バランス研究に基づく値であり、厚生労働省が示す一般的な推奨量(約1.0g/kg/日)を上回る。体重60kgの高校生なら1日84gが目安となり、食事だけでは不足しやすい水準である。
なお、同著者のBoisseau et al.(2002)では正の窒素バランスが観察された平均摂取量として1.57g/kg/日という値が報告されているが、これは食事観察に基づく実測値であるのに対し、2007年の1.40g/kg/日は安全率を加味して算出されたRDAである。本記事ではより保守的なRDA値(1.40g/kg/日)を高校生の目安の基礎とする。
成長期における追加タンパク質需要について、反直感的な知見もある。Aerenhouts et al.(2013, International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism)が思春期スプリントアスリート60名を2年間追跡した研究によれば、正の窒素バランスを維持するには女子1.46g/kg/日・男子1.35g/kg/日で十分であり、成長スパートのピーク期であっても平均1.5g/kg/日を超える摂取は必ずしも必要ではないと報告されている。成長が急速な時期に大量のタンパク質が必要と思われがちだが、同研究はその前提を支持していない。
部活動に取り組む高校生の多くが食事だけで1.4〜1.5g/kg/日を継続的に確保することは容易でない。体重60kgの男性なら1日84〜90gのタンパク質が目標となり、食事3食で均等に分散させる必要がある。こうした場合に、食事の補完としてプロテインパウダーを活用する選択肢が考えられる。プロテインパウダーはあくまで食品であり、食事での摂取を補完する位置づけとして利用が検討される。
Hecht et al.(2023, Journal of the Pediatric Orthopaedic Society of North America)の若年アスリートへの栄養推奨レビューでは、1日1.5g/kgを1食あたり0.3g/kgを目安に5回に分けて摂取することが示されている。同レビューは「小児集団ではほとんどのサプリメントが研究されておらず、臨床的に必要な場合を除いてサプリメント使用は推奨しない」とも明記しており、食事ファーストのアプローチが強調されている。
部活動の種目別でタンパク質の適正量はどう変わるのか
成人エリートアスリートを対象とした参考値として、瞬発系で2.0g/kg/日、球技系で1.75g/kg/日、持久系で1.5g/kg/日が示されている(国立スポーツ科学センター, 日本スポーツ栄養研究誌, 2008年)。ただしMazzulla et al.(2018)は思春期の方が少ない量でタンパク質を効率よく利用できる可能性を示しており、高校生への直接適用には発育発達段階の考慮が必要である。
種目間で0.5g/kg/日の差があることを体重で換算すると、体重60kgの選手では1日30gの違いになる。筋力・パワー系の種目では筋タンパク質の分解・合成サイクルが活発になるため需要が高く、持久系では相対的に少ない量でタンパク質代謝のバランスが維持されやすい傾向がある。
AND・DC・ACSM合同ポジションスタンド(Thomas et al., 2016, Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics)は、持久系アスリートで1.2〜2.0g/kg/日を推奨しており、強化トレーニング期や減量期にはさらに高値になる場合があるとしている。競技種目・トレーニング量・体格によって目安範囲は変わるため、一律の数値ではなく個別の状況に応じた調整が望ましいと考えられている。
Mazzulla et al.(2018, Nutrition & Metabolism)が思春期(14名)と成人(13名)を比較した運動後のタンパク質摂取実験では、全身タンパク質バランスのプラトーに達する時間あたりの摂取量は思春期男子0.12g/kg/h・思春期女子0.11g/kg/hと報告されており、成人より少ない量で効率よくタンパク質が利用される可能性が示唆されている。ただしこの値は1時間あたりの量であり、1食あたりの量とは別の指標である点に注意が必要である。
高校生がプロテインを選ぶとき何を基準にすべきか
高校生のプロテイン選びでは、タンパク質含有率・甘味料の種類・第三者認証・価格帯の4点を確認することが基本となる。主要WPC製品の価格帯は¥3,980〜¥5,333/kgの範囲にあり、タンパク質1食あたり19.5〜24.6gと幅がある(2026年4月時点)。
第三者認証(Informed Choice・Informed Sport等)は、製品が禁止物質検査を経ていることを示す指標である。インターハイや全国大会に出場する選手がアンチドーピングの観点から製品を選ぶ場合、この認証の有無が重要な判断基準になりうる。Hecht et al.(2023)が引用する調査によれば約34%の思春期アスリートがサプリメントを使用しているとされており、利用機会が増える一方で品質の検証が不十分な製品も市場に存在することが指摘されている。
ジュニア向け専用プロテインと一般向けWPCの実質的な差異についても整理しておく。ジュニア向け製品はカルシウム・鉄・ビタミン類が配合されている場合が多いが、タンパク質量(1食6〜8g)が一般向けWPC(1食20〜24g)より少なく、タンパク質1gあたりのコストは割高になる場合がある。食事から十分なカルシウム・鉄を摂取できている場合は、一般向けWPCをそのまま利用することも選択肢として考えられる。
主要WPC製品 比較(価格/kg 昇順、2026年4月時点)
| 製品 | ブランド | タンパク質/食 | 甘味料 | 価格(/kg) | 第三者認証 |
|---|---|---|---|---|---|
| ホエイプロテイン WPC | be LEGEND | 20.8g(28g/食) | スクラロース(人工・フレーバー) | ¥3,980 | Informed Choice |
| ホエイプロテイン100 | DNS | 24.6g(35g/食) | アセスルファムK・スクラロース・ネオテーム(人工3種) | ¥4,029 | Informed Choice |
| ホエイプロテイン100 スタンダード | GronG | 22g(30g/食) | スクラロース(フレーバー)/ なし(ナチュラル) | ¥4,980 | Informed Choice |
| ホエイプロテイン WPC | VALX | 21.4g(30g/食) | アスパルテーム・アセスルファムK(人工) | ¥4,980 | Informed Choice |
| ホエイプロテイン100 | SAVAS | 19.5〜20.0g(28g/食) | アスパルテーム・スクラロース(人工) | ¥5,082〜5,283 | インフォームドプロテイン認証 |
| WPC | BAZOOKA | 21〜22g(30g/食) | 羅漢果/ステビア(天然) | ¥5,333 | Informed Choice |
※各製品の代表フレーバーで比較。価格は各メーカー公式サイト通常価格(2026年4月時点)。ソート基準: 価格/kg 昇順。人工甘味料・天然甘味料のいずれも食品添加物として承認されており、通常の使用量での安全性に直接の差があるわけではない。
ジュニア専用製品との比較(タンパク質コスト比較)
| 製品 | ブランド | タンパク質/食 | 価格(/kg) | タンパク質1gあたり費用 | 甘味料 | Ca/食 | Fe/食 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ジュニアプロテイン | ウイダー(森永) | 8.3g(20g/食) | ¥3,751 | 約9.0円/g | 砂糖・果糖(天然糖類) | 500mg | 5.4mg |
| ジュニアプロテイン | SAVAS(明治) | 6.0g(14g/食) | ¥5,500 | 約12.8円/g | アセスルファムK・スクラロース・アスパルテーム(人工3種) | 462mg | 4.6mg |
| WPC(参考: 一般向け) | GronG | 22g(30g/食) | ¥4,980 | 約6.5円/g | スクラロース(フレーバー)/ なし(ナチュラル) | 添加なし | 添加なし |
※タンパク質1gあたり費用 = 価格(/kg) ÷ (タンパク質g/食 ÷ 1食量g × 1000)で算出。出典: 各メーカー公式サイト(2026年4月時点)。
ジュニア専用製品はカルシウム・鉄の補完が可能な一方、タンパク質単価は一般向けWPCより割高になる。食事でカルシウムや鉄が確保できていない場合にはジュニア向けの配合が補完になりうるが、その判断は管理栄養士等の専門家と相談することが望ましい。
成長期のプロテイン摂取に安全性の懸念はあるのか
成人の高タンパク質食と腎機能悪化との関連は確認されていないが(Devries et al., 2018)、成長期の子どもを対象とした長期データは限定的である。Hecht et al.(2023)は小児・思春期集団でのサプリメント研究が著しく少ないことを指摘しており、基礎疾患のある高校生では医師への相談が推奨される。
重金属汚染については、Informed Choice等の第三者認証を取得した製品ではロットごとの検査が実施されており、品質管理の面での信頼性が高い。認証を受けていない製品については製造工程の情報が限られるため、認証の有無を確認してから選ぶことが一つの指標となる。アンチドーピング規則が適用される競技に参加する高校生にとって、この確認は特に重要である。
甘味料については、人工甘味料(アスパルテーム・スクラロース・アセスルファムK等)と天然甘味料(ステビア・羅漢果等)に大別される。いずれも食品添加物として承認されているが、長期にわたる摂取や成長期への影響については現時点で研究が限られている分野もある。甘味料の種類を気にする場合には成分表示を確認し、選択の根拠とすることが考えられる。
「身長を伸ばす」「成長ホルモンを促進する」といった効果をプロテインに帰属させる情報が一部で見られるが、通常のホエイプロテイン摂取がこれらを直接もたらすという明確なエビデンスは確認されていない。プロテインパウダーはタンパク質を補給する食品であり、骨や筋肉の材料となるタンパク質を食事の補完として供給するものとして位置づけられている。
よくある質問
Q. プロテインを飲むと太るのか
プロテインパウダー1食あたりのカロリーは100〜115kcal程度であり、白米100g(168kcal)より低い。体脂肪の増減は1日の総カロリーバランスで決まるため、部活で消費エネルギーが増えている時期にタンパク質を補う目的で1日1〜2食を加える程度であれば、それ自体がカロリー過多の主因にはなりにくい。
Q. WPCとジュニア専用プロテインはどちらが高校生に向いているか
タンパク質を効率よく補いたい場合はタンパク質含有量が多くコスト効率の高い一般向けWPCが選択肢となり、カルシウムや鉄が食事から不足しがちな場合はこれらを配合したジュニア専用製品が補完になりうる。ただしSAVASジュニアプロテインのように人工甘味料を使用しているジュニア向け製品もあるため、「ジュニア向け=天然甘味料」とは限らない。
Q. 運動直後に飲むのがよいとされる根拠はどこにあるか
Hecht et al.(2023)のレビューでは、1日1.5g/kgを0.3g/kg × 5回に分けて摂取する分散摂取が示されている。運動直後のタイミングが特定の時間帯より優れているかどうかについては、1日を通じた総摂取量の確保が優先されるという知見(Jäger et al., 2017, Journal of the International Society of Sports Nutrition)もある。運動後に食事や補食でタンパク質を摂るタイミングとして位置づけることが、日常的に継続しやすいアプローチとして挙げられている。
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参考文献
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Boisseau N, Vermorel M, Rance M, Duché P, Patureau-Mirand P. Protein requirements in male adolescent soccer players. European Journal of Applied Physiology. 2007;100(1):27-33. DOI: 10.1007/s00421-007-0400-4
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Boisseau N, Le Creff C, Loyens M, Poortmans JR. Protein intake and nitrogen balance in male non-active adolescents and soccer players. European Journal of Applied Physiology. 2002;88(3):288-293. DOI: 10.1007/s00421-002-0726-x
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Aerenhouts D, Van Cauwenberg J, Poortmans JR, Hauspie R, Clarys P. Influence of growth rate on nitrogen balance in adolescent sprint athletes. International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism. 2013;23(4):409-417. DOI: 10.1123/ijsnem.23.4.409
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Mazzulla M, Volterman KA, Packer JE, Wooding DJ, Brooks JC, Kato H, Moore DR. Whole-body net protein balance plateaus in response to increasing protein intakes during post-exercise recovery in adults and adolescents. Nutrition & Metabolism. 2018;15:62. DOI: 10.1186/s12986-018-0301-z
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Hecht C, Bank N, Cook B, Mistovich RJ. Nutritional Recommendations for the Young Athlete. Journal of the Pediatric Orthopaedic Society of North America. 2023;5(1). DOI: 10.55275/JPOSNA-2023-599
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Thomas DT, Erdman KA, Burke LM. Position of the Academy of Nutrition and Dietetics, Dietitians of Canada, and the American College of Sports Medicine: Nutrition and Athletic Performance. Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics. 2016;116(3):501-528.
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Jäger R, Kerksick CM, Campbell BI, et al. International Society of Sports Nutrition Position Stand: Protein and Exercise. Journal of the International Society of Sports Nutrition. 2017;14:20.
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厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2020年版). 2019. https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
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国立スポーツ科学センター(JISS). アスリート向けタンパク質摂取ガイドライン参考値. 日本スポーツ栄養研究誌. 2008;第2巻.