プロテインとマグネシウム・亜鉛は一緒に摂るべきか — ZMAとホエイの組み合わせの科学的根拠
ZMAとホエイプロテインを同時摂取するとカルシウム競合で亜鉛吸収が約50%低下するリスクがある。独立RCTではZMAの筋肥大・テストステロン増加効果は再現されていない。マグネシウム・亜鉛の推奨量と摂取タイミングの根拠を整理する。
- マグネシウム
- 亜鉛
- ZMA
- ミネラル
- ホエイプロテイン
- テストステロン
- 吸収競合
本記事は公開された学術論文および公的機関の情報に基づく事実の整理であり、特定の疾患の診断・治療・予防を目的としたものではない。個別の健康上の判断は医師・管理栄養士等の医療専門家に相談されたい。
独立RCT(Wilborn et al., 2004, Journal of the International Society of Sports Nutrition)では、ZMAサプリメントはテストステロン・IGF-1・筋力・筋持久力のいずれにも有意な影響を与えなかった(n=42、8週間)。さらにカルシウムを亜鉛と同じ食事で摂取した場合、亜鉛吸収が約50%低下することが報告されている(Wood & Zheng, 1997, American Journal of Clinical Nutrition)。乳由来のホエイプロテインはカルシウムを含むため、ZMAとの同時摂取は亜鉛吸収を阻害する可能性がある。
プロテインとミネラルを一緒に摂る意味はあるのか
亜鉛欠乏状態にある成人男性に亜鉛を補充したところ、血清テストステロン濃度が正常範囲に回復したとPrasad et al.(1996, Nutrition)が報告している。ただしこれは欠乏→補充による正常化であり、亜鉛充足者でテストステロンがさらに増加することを示す知見ではない。
マグネシウムと亜鉛はいずれも筋タンパク質代謝に関わる必須ミネラルであり、運動によって汗中に損失される。しかし、食事から推奨量を摂取できている充足者において、追加補充が筋肥大やテストステロン分泌を増加させるかどうかは別の問題である。
ホエイプロテイン(WPC・WPH)単体にはマグネシウムや亜鉛は配合されていない製品が多い。ホエイ30g中に含まれる天然由来のミネラル量(マグネシウム約7mg・亜鉛約0.4mg・推定値)は、厚生労働省が定める推奨量に対して数%程度にとどまる。したがって、プロテインとZMAサプリメントを組み合わせる需要が生まれるが、同時摂取するかどうかは吸収阻害の観点から慎重に判断する必要がある。
ZMAは筋肥大・テストステロンへの効果が再現されているのか
Wilborn et al.(2004, Journal of the International Society of Sports Nutrition)は、抵抗運動(resistance exercise)を実施する健康男性42名を対象に8週間のZMA補充(亜鉛30mg・マグネシウム450mg・ビタミンB6 10.5mg)と偽薬を比較した。テストステロン・IGF-1・筋力・筋持久力のいずれにも群間有意差はなく、ZMAを最初に提唱したBrilla & Conte(2000)の結果は独立実験で再現されなかった。
ZMAという製品カテゴリを最初に提唱したBrilla & Conte(2000, Journal of Exercise Physiology online)の研究では、ZMA補充でテストステロンと筋力が増加したと報告された。ただしこの結果は独立した追試(Wilborn et al., 2004, JISSN; Koehler et al., 2009, EJCN)で再現されておらず、単一研究の知見として位置づけられる。なお筆頭著者Conteは亜鉛・マグネシウム・アスパラギン酸塩(ZMA)の商標をSNAC System社として保有しており利益相反が存在する。
亜鉛充足状態の健康男性14名を対象にしたKoehler et al.(2009, European Journal of Clinical Nutrition)では、亜鉛補充によるテストステロン変化は認められなかった。また独立RCTのGallagher et al.(2024, Nutrients 16(2): 251)では、トレーニング経験のある**男性16名・部分的睡眠剥奪条件下の急性投与(2夜)**でZMA補充の効果を検証し、睡眠の質・サブマクシマルウェイトリフティングパフォーマンスのいずれにも有意な効果をもたらさなかった(同研究は急性投与試験であり、長期慢性投与の効果を否定したわけではない点には注意)。現時点でのエビデンスは「亜鉛欠乏者への補充は正常化に寄与する可能性がある一方、充足者への追加補充に筋肥大・テストステロン増加効果があるとは言えない」という方向に収束している。
マグネシウムについては、Cinar et al.(2011, Biological Trace Element Research, 140:18-23)がテコンドー選手・非運動者を対象としてマグネシウム単独補充により安静時・疲労後のテストステロン値が有意に増加したと報告している(運動者でより顕著)。ただしこれはマグネシウム単独効果の知見であり、ZMA(亜鉛・マグネシウム複合製品)として同等の効果が再現されるかは別問題である。
マグネシウム・亜鉛の推奨量と過剰摂取上限はどれくらいか
厚生労働省(2024)「日本人の食事摂取基準2025年版」によれば、マグネシウムの推奨量は30〜49歳男性で380mg/日であり、サプリメント由来の耐容上限量は350mg/日(食事由来は設定なし)。亜鉛の推奨量は30〜74歳男性で9.5mg/日、耐容上限量は45mg/日。
サプリメントとしてのマグネシウム350mg/日という上限は、消化器症状(下痢・腹部不快感)の防止が主な根拠である。食事からのマグネシウム摂取については上限が設定されていない。
亜鉛を50mg/日以上継続摂取すると銅の腸管吸収が阻害されることがNIH ODS(米国国立衛生研究所 食事サプリメント室)により指摘されている。一般的なZMAサプリメントには亜鉛30mgが含まれており、食事由来の亜鉛(8〜10mg/日)を加えると合計38〜40mgになる。耐容上限(45mg/日)に近くなるため、ZMAとは別に亜鉛を含むマルチミネラルやマルチビタミンを重複摂取する場合は上限超過に注意が必要である。
食事・ホエイ・サプリそれぞれで摂れる量はどう違うか
厚生労働省(2024)「日本人の食事摂取基準2025年版」に基づけば、マグネシウム推奨量380mg/日に対してホエイ30gから摂取できる推定値は約7mg(約1.8%)、亜鉛推奨量9.5mg/日に対しては約0.4mg(約4.2%)にとどまる。ZMAサプリメントはマグネシウム約450mg(推奨量超)、亜鉛約30mg(推奨量の約3倍)を含むため、食事量との合算管理が必要である。
以下の比較表は、日本人30〜49歳男性を想定した場合の各ミネラルの厚生労働省推奨量・耐容上限量・主な食品源・ホエイプロテイン30g中の天然含有量(推定値)をまとめたものである(推奨量降順)。
| ミネラル | 推奨量(mg/日) | 耐容上限量 | 主な食品源 | ホエイ30g中の天然含有量 | ZMA一般的配合量 |
|---|---|---|---|---|---|
| マグネシウム(Mg) | 380(男性30〜49歳) | サプリ由来350mg/日(食事由来上限なし) | 玄米・豆腐・アーモンド・ほうれん草 | 約7mg(※推定) | 約450mg |
| 亜鉛(Zn) | 9.5(男性30〜74歳) | 45mg/日 | 牡蠣・牛肉・チーズ・大豆製品 | 約0.4mg(※推定) | 約30mg |
| ビタミンB6 | 1.4(男性30〜49歳) | 60mg/日(サプリ由来) | 鶏肉・サンマ・バナナ・玄米 | —(製品ごとに異なる。多くのプロテインは未配合) | 約10.5mg |
※ホエイ30g中のMg・Zn推定値は乳清タンパク質の組成平均から算出した概算。製品・フレーバーによって異なる。BAZOOKA WPHおよびWPCの原材料表にMg・Zn単独配合の記載はなく、ホエイ由来の天然含有分のみが含まれる。なおBAZOOKA WPHには栄養強化目的でビタミンB6が0.6〜0.7mg配合されている(フレーバーにより差異あり)。比較対象のデータ出典:厚生労働省(2024)日本人の食事摂取基準2025年版。
ZMAとホエイを時間を分けて摂るべき理由はなにか
Wood & Zheng(1997, American Journal of Clinical Nutrition)は、健常閉経後女性18名を対象とした研究で、カルシウム補充を亜鉛と同じ食事で摂取した場合に亜鉛吸収が約50%急性低下することを報告している。ホエイプロテインは乳由来のカルシウムを含むため、ZMAとホエイの同時摂取は亜鉛吸収を阻害する可能性がある。NOW Foods等ZMAサプリメーカーも公式に「乳製品や他のカルシウム含有食品との同時摂取を避けること」と記載している。
亜鉛の腸管吸収は主にZIP4トランスポーター(SLC39A4)が担い、カルシウム吸収のDMT-1経路とは別の輸送系である。ただしWood & Zheng(1997)が示したように、両者を同じ食事で摂取すると亜鉛側の吸収が有意に低下する現象が観察されており、機序の詳細は明確には解明されていない。ホエイプロテイン30gには乳由来のカルシウムが含まれており(製品によるが数十〜約100mg程度)、ZMAとの同時摂取は亜鉛吸収を低下させる可能性がある。
摂取タイミングを分けることで競合を回避できる。一般的に推奨されるパターンは、ホエイプロテインをトレーニング直後(筋タンパク質合成の観点から)、ZMAサプリメントを就寝前の空腹時(食事カルシウムの影響が少ない状態)に摂取するというものである。
ただし、食事中のカルシウムとの競合を最小化するには就寝2〜3時間前の空腹状態での摂取が望ましいとされる。
よくある質問
Q. ZMAとホエイは時間を空けて飲むべきか
A. 推奨は分けての摂取である。ホエイはカルシウムを含む乳由来食品であり、Wood & Zheng(1997, American Journal of Clinical Nutrition)の研究では、カルシウムを亜鉛と同じ食事で摂取した場合に亜鉛吸収が約50%急性低下することが報告されている。ZMAは就寝前空腹時、ホエイはトレーニング直後と時間を分けることで競合を回避できる。
Q. 亜鉛欠乏かどうかはどう判断すればよいか
A. 亜鉛欠乏の確定診断には医療機関での血清亜鉛値の測定が必要である。亜鉛欠乏のリスクが高いのは、動物性食品の摂取が少ない、極端なカロリー制限をしている、消化管疾患がある場合などである。欠乏が疑われる場合は医師・管理栄養士に相談のうえで検査を受けることが望ましい。
Q. マルチビタミンとZMAは併用してよいか
A. 注意が必要である。多くのマルチビタミンにも亜鉛(5〜15mg程度)が含まれており、ZMA(亜鉛30mg)との重複摂取で食事由来分と合算すると耐容上限(45mg/日)に近づく可能性がある。長期的な高用量亜鉛摂取は銅の吸収を阻害することが知られている(NIH ODS)。摂取前に各製品の亜鉛含有量を確認し、合計が上限を超えないよう調整することが望ましい。
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参考文献
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Wilborn, C.D. et al. (2004). Effects of Zinc Magnesium Aspartate (ZMA) supplementation on training adaptations and markers of anabolism and catabolism. Journal of the International Society of Sports Nutrition, 1(2), 12-20. DOI: 10.1186/1550-2783-1-2-12
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Brilla, L.R. & Conte, V. (2000). Effects of a novel zinc-magnesium formulation on hormones and strength. Journal of Exercise Physiology Online, 3(4), 26-36.
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Prasad, A.S. et al. (1996). Zinc status and serum testosterone levels of healthy adults. Nutrition, 12(5), 344-348. DOI: 10.1016/s0899-9007(96)80058-x
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Koehler, K. et al. (2009). Serum testosterone and urinary excretion of steroid hormone metabolites after administration of a high-dose zinc supplement. European Journal of Clinical Nutrition, 63(1), 65-70. DOI: 10.1038/sj.ejcn.1602899
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Cinar, V. et al. (2011). Effects of magnesium supplementation on testosterone levels of athletes and sedentary subjects at rest and after exhaustion. Biological Trace Element Research, 140(1), 18-23. DOI: 10.1007/s12011-010-8676-3
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Wood, R.J. & Zheng, J.J. (1997). High dietary calcium intakes reduce zinc absorption and balance in humans. American Journal of Clinical Nutrition, 65(6), 1803-1809. DOI: 10.1093/ajcn/65.6.1803
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Gallagher, C. et al. (2024). Zinc-Magnesium-Aspartate Supplementation in Athletes following Sleep Restriction. Nutrients, 16(2), 251. DOI: 10.3390/nu16020251 — 男性16名・2夜の部分的睡眠剥奪条件下での急性投与試験。睡眠の質・サブマクシマルウェイトリフティングを測定(認知機能の測定なし)
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厚生労働省 (2024). 日本人の食事摂取基準2025年版. https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001280663.pdf
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NIH Office of Dietary Supplements. Zinc Fact Sheet for Health Professionals. https://ods.od.nih.gov/factsheets/Zinc-HealthProfessional/