EAAサプリとWPHプロテインはどちらが優れているか — 吸収経路・MPS持続・コストの比較
EAAサプリとWPH(加水分解ホエイ)を吸収経路(PepT1 vs アミノ酸トランスポーター)・MPS持続時間・コスト効率の3軸で比較する。Nakayama et al.(2018)は同等EAA量でもWPHが遊離アミノ酸より血中AUCで有意に高い値を示すことを報告する。
- EAA
- WPH
- ホエイペプチド
- PepT1
- 必須アミノ酸
- 吸収速度
- MPS
EAAサプリとWPHの最大の違いは「タンパク質量」である。EAAサプリは1食あたりのタンパク質がほぼゼロ、WPHは20g超を供給する。吸収効率でもWPHが優位で、Nakayama et al.(2018, Nutrients)はEAA・ロイシン含量を揃えた条件でWPH 5.0gが遊離EAA混合物2.5gより血漿EAA濃度AUCで有意に高いことを報告している。コスト面ではEAA+WPCの組み合わせ(約¥384〜424/食)とBAZOOKA WPH単体(約¥497/食)がほぼ同等の価格帯に収まる。
EAAサプリとWPHプロテインは何が違うのか
EAAサプリは9種の必須アミノ酸を遊離アミノ酸(free amino acids)の形で配合した製品であり、1食あたりのタンパク質総量はほぼゼロに等しい。WPH(whey protein hydrolysate)はホエイタンパク質を酵素で加水分解し、ジペプチド(dipeptide)・トリペプチド(tripeptide)を主成分とするプロテイン製品であり、1食あたり20g前後のタンパク質を供給する。
EAAサプリは安静時で1.5〜3.0gの摂取からMPS刺激が始まり、15〜18gで飽和に達するとされる(Ferrando et al., 2023, Journal of the International Society of Sports Nutrition)。しかしこの効果は主に即時のアミノ酸供給による短時間(1〜2時間)のMPS刺激であり、タンパク質としての総量補給はできない。WPHは1食でタンパク質補給とMPS刺激の両方を担う。カロリー制限中など異化状態にある場合、EAA必要量は通常の3倍に増加するという報告もある(Ferrando et al., 2023)。
両製品の本質的な違いは次の3点に整理できる。
- 形態 — EAA: 遊離アミノ酸、WPH: ジ/トリペプチド主体のタンパク質
- タンパク質補給量 — EAA: 約0g/食、WPH: 20〜22g/食
- 吸収経路 — EAA: アミノ酸トランスポーター(LAT1・SNAT2等)、WPH: PepT1(ペプチドトランスポーター1)経由を主とし、消化後の遊離アミノ酸はアミノ酸トランスポーターも利用
なぜWPHは遊離EAAより血中アミノ酸濃度が高くなるのか
Nakayama et al.(2018, Nutrients)は健康若年男性11名を対象に、WPH(3.3g / 5.0g / 7.5g)と同等のEAA・ロイシン含量を持つ遊離アミノ酸混合物(2.5g)を比較した。WPH 5.0g群と7.5g群は、遊離アミノ酸混合物と比べて摂取後20〜120分の血漿EAA・ロイシン濃度AUCが有意に高かった(p<0.05)。同等のアミノ酸量でペプチド形態が遊離アミノ酸形態を上回るという、反直感的な結果である。
この差の機構的背景にあるのがPepT1(ペプチドトランスポーター1 / SLC15A1)の独立性だ。Adibi(1997, Gastroenterology)によれば、PepT1は小腸刷子縁膜に局在し、8,000種超のジ/トリペプチドをプロトン共役輸送で高容量・低親和性に吸収する。PepT1は遊離アミノ酸を基質とせず、L-バリンやL-ヒスチジンなどの遊離アミノ酸を用いた阻害実験でもPepT1の輸送活性は低下しない。遊離EAAはLAT1(大型中性アミノ酸トランスポーター)やSNAT2等の異なるトランスポーター系を使用する。
結果として、WPH(ジ/トリペプチド主体)はPepT1という専用の高スループット輸送経路を使い、遊離EAAが利用するアミノ酸トランスポーターとは並行して独立的に吸収される。複数のアミノ酸が同一トランスポーター(LAT1等)を競合するアミノ酸トランスポーター系と比べ、PepT1はより多くのアミノ酸単位を効率よく輸送できるという構造的な優位性が存在する。ただし、遊離EAA製品の通常用量でトランスポーター飽和が臨床的に有意であることを直接示したRCTは現時点で確認されていないため、この点は機構論的な考察として留めておくことが適切である。
吸収形態・経路・製品スペック比較
ソート基準: EAA量/食 降順(WPH製品はタンパク質形態のため末尾に配置)
| 製品名 | 形態 | EAA量/食 | ロイシン/食 | タンパク質量/食 | 価格/食(概算) | 甘味料 | 認証 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| VALX EAA9 | 遊離EAA(9種) | 14,650mg | 5,500mg | ≒0g | 約¥224 | スクラロース・アセスルファムK・ステビア | Informed Choice |
| GronG EAA パウダー | 遊離EAA(8種 ※注1) | 約7,500mg | 比率未公表 | ≒0g | 約¥65 | スクラロース・アセスルファムK・ステビア | 未取得 |
| Myprotein THE EAA | 遊離EAA(Amino9®) | 6,800mg以上 | 2,800mg | ≒0g | 未確認 | 未確認 | 未確認 |
| DNS EAA PRO | 遊離EAA(9種+アルギニン) | 3,700mg | 約1,347mg(推定) | ≒0g | 約¥200 | ステビア・アスパルテーム(※注2) | Informed Choice |
| LIMITEST ホエイペプチド | WPH(ジ/トリペプチド) | 推定≥11g(EAA約50%相当) | 推定2.3g | 22.3g | 約¥165 | なし(無添加) | 未確認 |
| BAZOOKA WPH | WPH(ジ/トリペプチド) | 9.7g | 3.0g | 20.1〜20.5g | 約¥497 | 羅漢果(天然) | Informed Choice |
| GOLD’S GYM CFMホエイペプチド | WPH(ジ/トリペプチド) | 未公表 | 未公表 | 約17g | 約¥190 | スクラロース | なし |
※注1: GronG EAAはヒスチジン未配合の8種EAA製品。必須アミノ酸は9種(ヒスチジンを含む)であるため、9種EAA製品との単純比較は適切でない。 ※注2: DNS EAA PROはアスパルテームを含む。フェニルケトン尿症(PKU)の方は摂取前に医師に相談されたい。
製品スペックは各メーカー公式サイトの情報に基づく(2026年4月時点)。
MPS持続時間はどちらが長いのか
EAAサプリのMPS刺激は即効性が高い(ピーク20〜30分)が持続は1〜2時間と短い。完全タンパク質であるホエイ25gは、6.25g+ロイシン補充と比べて運動後に持続的なMPS増加を示した唯一の条件であった(Churchward-Venne et al., 2012, The Journal of Physiology、n=24)。タンパク質総量とペプチド形態の組み合わせがMPS持続に寄与する。
完全タンパク質(ホエイ)はEAAより長時間の持続的なMPS増加を示すことが報告されている。Churchward-Venne et al.(2012, The Journal of Physiology)はn=24の男性(8名×3群)を対象に、6.25g ホエイ + ロイシン補充群が25g ホエイと同等のMPS刺激を示したが、運動後に持続したMPS増加を示したのは25g ホエイ単体群のみであったと報告している。ロイシンはmTOR活性化の鍵分子であるが、それを取り囲む他のEAAや非必須アミノ酸(NEAA)の存在が持続的なMPS応答に寄与すると考えられている。
高齢者では同化抵抗性(anabolic resistance)によりロイシン閾値が高まる。Katsanos et al.(2006, American Journal of Physiology - Endocrinology and Metabolism)は、EAA 6.7g中のロイシン比率を26%から41%(2.75g)に引き上げることで高齢者のMPS応答が若年者水準に達したと報告した。高齢者がEAAサプリを使用する場合、ロイシン含有量の確認が特に重要になる。
WPHは1食あたりタンパク質20g超を含み、そのうちロイシン量も3.0g(BAZOOKA WPH)や推定2.3g(LIMITEST)に及ぶ。タンパク質総量とペプチド形態の組み合わせが、より持続的なアミノ酸供給とMPS持続に寄与する。
EAA+WPCとWPH単体はどちらがコスト効率が高いのか
EAAサプリはタンパク質補給量がゼロのため、実際の使用ではWPCなど別のプロテインと組み合わせるケースが多い。EAA+WPCの2製品組み合わせとWPH単体のコストを比較すると次の通りである(各メーカー公式サイト・2026年4月時点の通常価格)。
EAA(VALX EAA9)+ WPC(GronG等)の組み合わせは1食あたり約¥384〜424、BAZOOKA WPH単体は約¥497、LIMITEST ホエイペプチド単体は約¥165となる。EAA+WPCの合計コストとBAZOOKA WPH単体はほぼ同等のコスト帯に収まる。LIMITEST WPHは最安水準であり、コスト効率を最優先にする場合に検討に値する。
| 組み合わせ | 内訳 | 1食コスト目安 |
|---|---|---|
| VALX EAA9 + GronG WPC | ¥224 + ¥160〜200前後 | 約¥384〜424 |
| LIMITEST ホエイペプチド単体 | — | 約¥165 |
| BAZOOKA WPH単体 | — | 約¥497 |
EAA+WPCの組み合わせは管理するサプリメント数が2製品になるという運用上のコストも伴う。WPH単体は1製品でタンパク質補給とEAA供給を完結できるため、管理の簡便さという観点ではWPHに優位性がある。
一方でEAAサプリには、トレーニング中の消化負担を抑えながら摂取できるという用途の柔軟性がある。タンパク質補給は食事から十分に摂れており、トレーニング中のアミノ酸補給だけが目的である場合は、EAAサプリ単独使用がコスト効率の高い選択となることもある。
よくある質問
Q. WPHとEAAサプリは同時に摂取できるか
同時摂取を否定する根拠は現時点で特にない。ただし、WPH自体がEAAを9.7g(BAZOOKA WPH)含んでおり、1食あたりのEAA・ロイシン量としては十分な水準に達している。トレーニング前後にEAAサプリを追加する場合は、総EAA摂取量が過剰にならないよう全体の食事計画を踏まえて判断することが望ましい。
Q. ペプチドプロテインとEAAサプリは吸収速度が同じか
ピーク時間と総吸収量(AUC)は別の指標である。遊離EAAは摂取後20〜30分以内に血中濃度がピークに達するとされ、即効性という点では優れている。一方、Nakayama et al.(2018, Nutrients)はWPH 5.0gが同等のEAA量を持つ遊離アミノ酸混合物より摂取後20〜120分のAUCで有意に高かったことを示した。ピークの速さと総供給量は別の概念であり、「どちらが吸収が速い」という単純な比較では全体像を見誤る可能性がある。
Q. カロリー制限中はEAAサプリとWPHのどちらが向いているか
カロリー制限中(異化状態)では、EAAの必要量が通常の3倍に増加するとの報告がある(Ferrando et al., 2023, Journal of the International Society of Sports Nutrition)。EAAサプリのみでこの必要量を満たすには高い摂取量と頻回摂取が必要になる。WPHは1食でタンパク質20g超を供給しつつEAA・ロイシン量も確保できるため、カロリー制限下での筋肉保持を目的とする場合はWPHを主軸に置く選択が多い。個人の食事構成・目的によって最適解は異なる。
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参考文献
- Nakayama K, Sanbongi C, Ikegami S. 2018. Effects of Whey Protein Hydrolysate Ingestion on Postprandial Aminoacidemia Compared with a Free Amino Acid Mixture in Young Men. Nutrients, 10(4), 507. DOI: 10.3390/nu10040507
- Adibi SA. 1997. The oligopeptide transporter (Pept-1) in human intestine: biology and function. Gastroenterology, 113(1), pp.332-340. DOI: 10.1016/S0016-5085(97)70112-4
- Ferrando AA et al. 2023. International Society of Sports Nutrition Position Stand: Essential amino acid supplementation on skeletal muscle and physical function. Journal of the International Society of Sports Nutrition, 20(1), 2263409. DOI: 10.1080/15502783.2023.2263409
- Churchward-Venne TA et al. 2012. Supplementation of a suboptimal protein dose with leucine or essential amino acids: effects on myofibrillar protein synthesis at rest and following resistance exercise in men. The Journal of Physiology, 590(11), pp.2751-2765. DOI: 10.1113/jphysiol.2012.228833
- Katsanos CS et al. 2006. A high proportion of leucine is required for optimal stimulation of the rate of muscle protein synthesis by essential amino acids in the elderly. American Journal of Physiology - Endocrinology and Metabolism, 291(2), E381-E387. DOI: 10.1152/ajpendo.00488.2005
- Calbet JA, MacLean DA. 2002. Plasma glucagon and insulin responses depend on the rate of appearance of amino acids after ingestion of different protein solutions in humans. The Journal of Nutrition, 132(8), pp.2174-2182. DOI: 10.1093/jn/132.8.2174