β-アラニンのサプリはどう選ぶのか — 1回量・価格・アンチドーピング検査で国内5製品を比較
β-アラニン単体サプリを日本向けの公式直販サイトで買える5製品に絞り、1回量・製品1gあたり価格・アンチドーピング関連の表記で比較する。ISSNの推奨量、研究で使われた用量、BfRが2026年に示した1回400mg未満の目安も並べて整理する。
国際スポーツ栄養学会(ISSN)は、β-アラニンを1日4〜6g・1回2g以下に分けて最低2週間摂ると筋肉中のカルノシンが増えると整理しており、効果の報告は1〜4分程度の高強度運動が中心で、効果の大きさは小さい(Trexler et al., 2015; Saunders et al., 2017)。一度に多く摂るとしびれ(パレステジア)が出やすく、ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)は2026年8月の意見書で、健康な成人で1回400mg未満ならしびれのリスクはごく低いとし、摂取は12週未満とする表示を提案した。日本向けの公式直販サイトで買える単体5製品の製品1gあたりの通常価格は約¥3.7〜¥25.5で、どれを選ぶかは価格・1回量の分けやすさ・アンチドーピング関連の表記のどれを優先するかで変わる。
β-アラニンは何に効果が報告されているのか
系統的レビューとメタ分析(40研究・65プロトコル・1,461名)では、β-アラニン補給の全体効果量は0.18(95%信頼区間0.08〜0.28)で、効果量としては小さい値だった(Saunders et al., 2017)。運動時間が効果を左右し、15研究・360名のメタ分析では60〜240秒と240秒超の運動で有意な改善、60秒未満では有意差なしと報告されている(Hobson et al., 2012)。
作用として想定されているのは筋肉中のカルノシンの増加である。Harris et al.(2006)は、3.2g/日と6.4g/日(400mgまたは800mgの複数回)を4週間補給し、ヒトの外側広筋のカルノシンが3.2g/日で約42%、6.4g/日で約64%増えたと報告した(同じ試験ではカルノシンそのものを与えた群も設けられた)。ISSNの見積もりでは、2週間で20〜30%、4週間で40〜60%の増加にあたる(Trexler et al., 2015)。
運動の種類による差も報告されている。ISSNは、効果が目立つのは1〜4分続く運動で、60秒未満では酸性化が主な制限要因とは考えにくく、25分を超える運動では一貫した効果が示されていないとまとめた(Trexler et al., 2015)。Saunders et al.(2017)の解析でも、0.5〜10分の運動で「運動キャパシティ」の効果量は0.50(95%信頼区間0.25〜0.75)だった一方、「パフォーマンス」は0.11(同-0.20〜0.42)で、信頼区間がゼロをまたいでいる。運動キャパシティは疲れ切るまで続けられる時間や量、パフォーマンスは決められた距離のタイムなどを指す。
Hobson et al.(2012)の解析では、改善の中央値は約2.85%(範囲 -0.37〜10.49%)で、有意だったのは運動キャパシティの指標で、パフォーマンスの指標では有意差がなかった。総摂取量の中央値は約179gだった。
1日にどれだけ、どう分けて摂るのか
摂取量の基準は出どころによって異なる。ISSNは1日4〜6g・1回2g以下・最低2週間、Harris et al.(2006)の補給試験は3.2g/日と6.4g/日を4週間、BfRはしびれのリスクがごく低い量として1回400mg未満・1日1.2g未満・12週未満を示している。
| 出どころ | 種類 | 1日量 | 1回量 | 期間 |
|---|---|---|---|---|
| ISSN ポジションスタンド(2015) | 学会の推奨 | 4〜6g | 2g以下に分割 | 最低2週間 |
| Harris et al.(2006) | 補給試験 | 3.2g/6.4g | 400mgまたは800mgの複数回 | 4週間 |
| BfR 意見書 046/2026(2026年8月19日) | 規制機関の評価 | 1.2g未満 | 400mg未満(成人) | 12週未満 |
3つは性質が異なる。ISSNは効果が確認された用量の整理、Harris et al.(2006)は筋カルノシンの増加を測った試験条件、BfRは食品としての表示に向けた安全面の評価である。BfRの400mgは健康にもとづく指針値ではなく、しびれのリスクがごく低いとみなせる目安として示されている。ドイツの機関であるBfRは、介入試験の大半が若年・健康・主に男性を対象とし、24週を超えるデータがないことから、データの質は不十分で、健康にもとづく指針値は設定できないとしている。
しびれについては、ISSNが非徐放性の製品で800mgを超える量を摂る人に多いと記している(Trexler et al., 2015)。ISSNは、1.6gずつに分ける方法や徐放性の製品でこれが弱まる可能性にも触れている。Décombaz et al.(2012)は健康成人11名・単盲検の試験で、1.6gの徐放錠は純溶液より血漿中のピーク濃度が低く(82 vs 248 μmol/L)、ピリピリ感は溶液で「low」、錠剤で「very low」だったと報告した。この試験は小規模で、錠剤とプラセボは区別できなかったと記されている。
BfRはあわせて、小児・青少年・妊娠中や授乳中の人・65歳以上を、製品表示で対象外とすることを提案している。粉末製品には計量用のスプーン等の補助具を付けることも提案した。該当する場合や持病・服薬がある場合は、医師・管理栄養士等の医療専門家に相談されたい。
収載条件を満たした単体サプリ5製品は何がどれだけ違うのか
日本向けの公式直販サイトで購入でき、公式サイトで価格と内容量を確認できたβ-アラニン単体の製品は5つである。製品1gあたりの通常価格は、最も低いNICHIGAの900gで約¥3.7(同ブランドの250gでは約¥5.9)、最も高いHALEOで約¥25.5である。
本記事の収載基準は「β-アラニン単体の製品で、日本向けの公式直販サイト(モールへの出店は含めない)で購入でき、内容量・価格を公式サイトで確認できること」とする。プレワークアウトやEAA・BCAAに配合された複合製品は、β-アラニンの量だけを比較できないため対象外とした。Kentai・ハルクファクター・VALX・アルプロン・ビーレジェンドの直販サイトの商品一覧には単体製品がなかった。NOW Foodsは日本向けの公式直販サイトを確認できなかったため収載していない(2026年10月15日時点)。
確認状況は、NICHIGA・GronG・マイプロテイン・DNS・HALEOの5製品とも、公式ページで価格・内容量・在庫を確認した。1回量とβ-アラニン量は、DNS・HALEO・マイプロテインに公式の表示があり、NICHIGAは1回量の設定がなく目安(1日約2g・1回500mg以下)の記載のみ、GronGはテキストの表示で確認できなかった(2026年10月15日時点)。基準の適合はブランドを問わず同じ厳格さで確認している。
価格は単品の通常価格(税込・送料別)で、製品1gあたりは「税込価格 ÷ 内容量(g)」、製品3.2gあたりは「製品1gあたり × 3.2」で換算した(研究で使われた1日量3.2gに相当する製品の量で、β-アラニンの量ではない。DNSは製品3.3g中にβ-アラニン3.2g)。容量違いがある製品は下限〜上限のレンジで示し、並び順は製品1gあたり価格の昇順(容量違いがある製品は下限)とする。
| 製品 | 内容量 | 通常価格 | 製品1gあたり | 製品3.2gあたり | メーカー表示の1回量(β-アラニン量) | アンチドーピング関連の表記 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| NICHIGA ベータアラニン(国内製造) | 900g/250g | ¥3,355/¥1,465 | 約¥3.7〜5.9 | 約¥11.9〜18.8 | 1回量の設定なし(目安 1日約2g・1回500mg以下) | 公式ページに記載なし |
| GronG ベータアラニン パウダー | 500g | ¥1,980 | 約¥4.0 | 約¥12.7 | 確認できず | 公式ページに記載なし |
| マイプロテイン ベータアラニン パウダー | 500g | ¥2,500 | ¥5.0 | ¥16.0 | 1.5g(1.5g)・1日2回 | 公式ページに記載なし |
| DNS ベータアラニン | 100g | ¥1,990 | 約¥19.9 | 約¥63.7 | 3.3g(3.2g) | インフォームドチョイス取得 |
| HALEO BETA ALANINE | 96g | ¥2,450 | 約¥25.5 | 約¥81.7 | 約3.2g(3,200mg) | 「アンチ・ドーピング 栄養分析結果証明書」を掲載(同社の案内ページにBSCG証明書) |
注: 価格は送料別の版で比べ、定期便・セール・送料込みの別版・セット品の価格は表に含めない(いずれも有無と条件は製品ごとに異なる)。NICHIGAは送料込みの版も別に販売されており、表は送料別の版の価格である。マイプロテインは500gのみが選択できた。β-アラニンはWADA禁止表の禁止物質ではなく、アンチドーピング関連の表記は製造工程などでの禁止物質の混入に対する検査を示すものである。「公式ページに記載なし」は、2026年10月15日時点で公式ページに表記を確認できなかったことを示し、認証や検査がないことを意味しない。
製品の1回量をBfRの「1回400mg未満」と比べると、NICHIGAの目安(1回500mg以下)は上限で約1.25倍、マイプロテインの1.5gは約3.8倍、DNSの3.3gとHALEOの約3.2gは約8倍にあたる。ISSNの「1回2g以下」(Trexler et al., 2015)には、NICHIGAとマイプロテインが収まり、DNSとHALEOは超える。1日量では、マイプロテインは1日2回で合計3g、NICHIGAは体重50kgで1日約2gの目安で、BfRの1日1.2g未満を上回り、ISSNの1日4〜6gには届かない。DNSとHALEOは公式ページに1日の回数の記載がない。BfRの400mgは健康にもとづく指針値ではなく、ISSNの用量も効果の研究にもとづく整理であるため、これらは各社の表示を2つの目安に並べた比較で、どの製品が適切かを示すものではない。
選ぶときに何を見るか
結論を1つに絞れる軸はなく、価格・1回量の調整しやすさ・アンチドーピング関連の表記のどれを優先するかで候補が変わる。表の数値は2026年10月15日時点の公式表示で、価格は改定されうる。用量の基準はISSN(Trexler et al., 2015)、Harris et al.(2006)、BfRで異なる。
- 価格を優先する場合は、製品1gあたりの通常価格が低いNICHIGA・GronG・マイプロテインが候補になる。NICHIGAは容量で幅があり、900gなら約¥3.7、250gなら約¥5.9である。DNSとHALEOは製品1gあたりでこの3製品の約4〜7倍になる。GronGは1回量の表示を公式テキストで確認できなかった。
- 1回量を小さく分けたい場合は、粉末で量をさじ加減できる点を見る。5製品とも粉末で、DNSとHALEOは付属スプーンの量が1回量の目安となっている。マイプロテインは1回1.5gで、ISSNの2g以下に収まる。
- 競技者でアンチドーピング関連の表記を重視する場合は、表記の内容を確認する。DNSは「インフォームドチョイス取得」、HALEOは「アンチ・ドーピング 栄養分析結果証明書」を掲載し、同社の案内ページでBSCGの証明書を示している。インフォームドチョイスとBSCGはいずれも禁止物質の検査を行う第三者の制度で、検査の対象や頻度は各制度で確かめられる。NICHIGA・GronG・マイプロテインの公式ページには表記を確認できなかった。
- BfRの目安を意識する場合は、1回量が決まっている製品では400mgとの差を確認する。マイプロテインは約3.8倍、DNSとHALEOは約8倍で、NICHIGAの目安は400mgに最も近い。粉末の量を減らして使うかどうかは、ISSNや研究の用量とBfRの目安のどちらを参照するかによって判断が分かれる。
よくある質問
β-アラニンのしびれ(パレステジア)は体に悪いのか
しびれの出方は量と剤形で変わり、ISSNは非徐放性の製品で800mgを超える量を摂る人に多いとし(Trexler et al., 2015)、徐放錠で弱まったとする報告もある(Décombaz et al., 2012)。長期の安全性については、BfRが24週を超える試験データがないとして健康にもとづく指針値を設定できないとし、健康な成人で1回400mg未満ならしびれのリスクはごく低いとしている。しびれの有無は長期の安全性の判断材料にはならず、両者は別の問いとして扱われている。
β-アラニンとクレアチンは一緒に摂ってもよいのか
ISSNは、β-アラニンとクレアチンの併用で相加的な効果を示した研究が2件あるとしているが、2件ともβ-アラニン単独の群がなく、単独の群を設けた研究では相乗効果は示されておらず、追加の研究が必要と整理している(Trexler et al., 2015)。併用時の具体的な1回量や安全性はBfRの意見書の対象外である。クレアチンについてはクレアチンとは — 作用機序・効果・安全性の基礎に整理がある。
β-アラニンは毎日ずっと摂り続けてよいのか
ISSNの「最低2週間」は筋肉中のカルノシンが増えるまでの最短の目安で、Harris et al.(2006)の補給試験は4週間だった。BfRの「12週未満」は、24週を超える介入試験のデータがないことを理由にした表示の提案で、12週を超えると有害と示したものではない。製品の案内がこれらと異なる場合は、表示と各基準を照らして確認するとよい。
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参考文献
- Trexler ET, Smith-Ryan AE, Stout JR, Hoffman JR, Wilborn CD, Sale C, Kreider RB, Jäger R, Earnest CP, Bannock L, Campbell B, Kalman D, Ziegenfuss TN, Antonio J (2015). International society of sports nutrition position stand: Beta-Alanine. Journal of the International Society of Sports Nutrition, 12, 30. https://doi.org/10.1186/s12970-015-0090-y
- Hobson RM, Saunders B, Ball G, Harris RC, Sale C (2012). Effects of β-alanine supplementation on exercise performance: a meta-analysis. Amino Acids, 43(1), 25-37. https://doi.org/10.1007/s00726-011-1200-z
- Saunders B, Elliott-Sale K, Artioli GG, Swinton PA, Dolan E, Roschel H, Sale C, Gualano B (2017). β-alanine supplementation to improve exercise capacity and performance: a systematic review and meta-analysis. British Journal of Sports Medicine, 51(8), 658-669. https://doi.org/10.1136/bjsports-2016-096396
- Harris RC, Tallon MJ, Dunnett M, Boobis L, Coakley J, Kim HJ, Fallowfield JL, Hill CA, Sale C, Wise JA (2006). The absorption of orally supplied β-alanine and its effect on muscle carnosine synthesis in human vastus lateralis. Amino Acids, 30(3), 279-289. https://doi.org/10.1007/s00726-006-0299-9
- Décombaz J, Beaumont M, Vuichoud J, Bouisset F, Stellingwerff T (2012). Effect of slow-release β-alanine tablets on absorption kinetics and paresthesia. Amino Acids, 43(1), 67-76. https://doi.org/10.1007/s00726-011-1169-7
- Bundesinstitut für Risikobewertung (BfR) (2026). Beta-Alanin in Nahrungsergänzungsmitteln und angereicherten Lebensmitteln. Stellungnahme Nr. 046/2026 vom 19. August 2026. https://www.bfr.bund.de/assets/01_Ver%C3%B6ffentlichungen/Stellungnahmen_deutsch/beta-alanin-in-nahrungsergaenzungsmitteln-und-angereicherten-lebensmitteln.pdf